エクセル在庫管理のやり方|テンプレ・基本項目・注意点を徹底解説【2026年版】
エクセルで在庫管理を始めたいけれど、
「どんな項目を作ればいい?」「テンプレはどう使う?」「ミスを減らす設定は?」
と迷う方はとても多くいます。
在庫管理は“特別なシステム”がないと運用できないと思われがちですが、
実はエクセルでも 基本の設計さえ押さえれば、十分に現場が回る仕組み を作れます。
重要なのは、表の作り方よりも 「どの項目を管理するか」「ミスを防ぐ工夫があるか」 という考え方です。
この記事では、
・エクセル在庫管理の基本項目
・テンプレートの使い方
・初心者がつまずきやすい注意点
を整理し、今日から使える“実務的なやり方”をわかりやすく解説します。
「まずはエクセルで整えたい」「システム導入の前準備をしたい」という中小企業の方に向けて、
失敗しない在庫管理の始め方を紹介します。
「何から整えれば在庫が安定するのか?」を知りたい方は、まずここから進めてください。
🟥 H2-1|エクセル在庫管理が限界を迎えるのはどこか?ミスが増大する3つのポイント
エクセルは、“すぐに始められる”という理由から多くの中小企業で在庫管理に利用されています。
しかし、運用の規模が広がるにつれ 誤入力・反映の遅れ・属人化 が目立ち始め、
どこかの段階で必ず運用が立ち行かなくなる時期が訪れます。
ここでは、エクセル管理が破綻しやすい代表的な3つの場面を整理します。
🟦 H3-1|入出庫の入力が追従できず在庫ズレが発生する(もっとも大きな要因)
エクセル管理で圧倒的に多いトラブルが 在庫数の不一致 です。
- 出庫を担当者が記録し忘れる
- 入庫をメモに残したまま後でまとめて入力する
- 部署ごとにばらばらのシートを使い、数値が合わない
こうした**“反映の遅れ”や“記録漏れ”** が積み重なると、
帳簿在庫と実在庫が一致しない状態 になり、現場では混乱が起こります。
特に次のような運用条件が揃うと、エクセル管理は限界に近づきます:
- 担当者が複数
- 入出庫件数が多い
- 倉庫が広い、または複数の拠点がある
エクセルでの在庫管理が破綻しやすい典型例が、この在庫ズレ問題です。
🟦 H3-2|SKUや商品マスタが増えすぎて制御できなくなる
エクセル管理が崩れ始めるもう1つのポイントが
SKU(最小管理単位)の増加に対応できなくなること です。
色、サイズ、パッケージなどを追加するたびに SKU が増殖し、
入力者が 「どのコードを使えば正しいのか」 判断できなくなります。
さらに、
- 商品名
- 社内コード
- JAN
- バリエーション情報
といった情報をエクセル上で整合させるのは非常に煩雑で、
誤入力 → マスタ破損 → 棚卸差異 という悪循環を招きます。
SKUマスタの維持は、本来エクセル運用には向かない業務です。
SKUとは?在庫と販売をつなぐ“最小単位”をやさしく解説
🟦 H3-3|棚番(ロケーション)の変更がExcelに反映されず現場が混乱する
エクセルでは、棚番(ロケーション)の更新スピードに管理が追いつきません。
現場では日常的に:
- 倉庫のレイアウト変更
- 棚替え
- 商品の置き場所の移動
といった変更が起きますが、
この情報がエクセルに即時反映されないため、商品の所在がわからなくなるケースが発生します。
さらに、
- 旧棚番で探してしまう
- 新しい棚番が共有されていない
- エクセル同時編集できず更新漏れが起こる
など、必ず人的ミスが重なっていきます。
ロケーション管理は“リアルタイム更新”が前提であり、
エクセルでは仕組み的に追従しきれない領域です。
🟥 H2-2|初心者でもわかる“在庫管理の全体像”|まず何を整えればミスが減るのか?
エクセル在庫管理でつまずく企業の多くは、
「在庫管理とは何を指すのか?」
という 全体戦略が曖昧なまま、現場だけで対処している状況 にあります。
在庫管理は、本来バラバラの作業ではなく、
棚卸 → 入出庫 → 発注補充 が一つの“循環”としてつながっています。
この循環を分解して理解するだけで、
エクセル管理でもミスが大幅に減り、改善ポイントが見えてきます。
🟦 H3-1|棚卸・入出庫・発注の3つを“分解して”考える
在庫管理の基本サイクルは、以下の3つです。
- 棚卸(在庫数量の確定)
- 入出庫(数量の増減を正しく記録)
- 発注(適正在庫を決める)
多くの中小企業で起きている混乱の原因は、
この3つが 同じシート上で、同じルールで、同じ担当者によって運用されている ことです。
本来は次のように分解すべきです:
① 棚卸
目的:在庫数量の確定
起きやすい問題:棚番のズレ、不一致、記録漏れ
改善の第一歩は「棚卸の標準化」です。
▶ 詳しくはこちら
→ 棚卸とは?目的・種類・効率化のポイントを徹底解説
② 入出庫
目的:日々の動きをリアルタイムで反映
エクセルでは「多人数・多拠点」での更新に必ず限界が来ます。
起きる問題:
- 入力遅延
- 数式崩壊
- 同時編集できない
- 記録漏れ
帳尻合わせを続けた結果、棚卸で大きなズレが発生します。
③ 発注
目的:適正在庫を維持し、欠品・過剰在庫を防ぐ
しかしエクセルでは、
- 過去データの集計
- 発注点の算出
- 売れ行きの変化への対応
これらを“人の計算”で行うことになり、精度が安定しません。
▼ 結論
この「棚卸・入出庫・発注」を切り分けて理解するだけで、
どこにミスが発生しているのか、改善の優先度がハッキリします。
特に 棚卸と入出庫だけでもシステム化すれば在庫精度は劇的に改善します。
棚卸の基本・効率化手法を整理。Excelで管理する限界がわかります。
🟦 H3-2|エクセルで管理できるところ/限界がくるところの境界線
エクセル在庫管理のポイントは、
「エクセルでできること」「エクセルでは詰むこと」の境界線を理解すること」 です。
🔵 エクセルで管理できる領域
以下の条件が揃っていれば、エクセルでも破綻しにくいです:
- SKU数が少ない(〜300程度)
- 倉庫が1拠点のみ
- 入出庫担当が1〜2名
- 棚番の変動が少ない
- 発注ロジックがシンプル
この場合は、エクセルのテンプレートでも十分に回せます。
🔴 エクセルで限界がくる領域(多くの企業はここ)
次に当てはまればほぼ確実に破綻します:
- SKUが増え始める(〜500→1000→1500…)
- 色・サイズ・型番が増殖して整理できない
- 複数名で同時に入出庫を記録する
- 棚番・ロケーション変更が頻発
- EC・店舗・倉庫など複数チャネルで在庫を共有
- 発注点が「勘」になり、欠品と余剰が繰り返されている
特に ロケーション管理(棚番)が動く会社は100%エクセルが破綻 します。
棚番の更新がリアルタイムでできず、
旧・新棚番が混ざり、現場の混乱につながるためです。
👉 ロケーション管理の基本はこちら
→ ロケーションコードの作り方|棚番・エリア管理の設計手順
Excel管理で混乱しやすい棚番とロケーション管理の境界線を解説。
🟥 H2-3|エクセル在庫から“ミスゼロ運用”へ移行する改善ステップ
エクセル在庫管理で起きるミスの多くは、
「項目の整理が曖昧なまま進めてしまう」
ことが根本原因です。
逆にいえば、
商品マスタ → ロケーション → 発注点
の3つだけ整えることで、現場の在庫精度は驚くほど安定します。
ここでは、エクセル管理の会社が“ミスゼロ運用”へ近づくための
具体的なステップを紹介します。
🟦 H3-1|ステップ1:商品マスタ(SKU)を整理して重複をなくす
在庫管理の基礎となるのが 商品マスタ(SKU) です。
エクセル管理で最も多いトラブルが、
- 同じ商品に複数のコードが存在する
- 色・サイズごとに表記ゆれが発生
- JAN・商品番号・SKU の関係がぐちゃぐちゃ
- どのコードが最新なのか担当者によって認識が違う
という SKUの重複・崩壊問題 です。
SKUマスタが破綻すると、在庫数量も、棚卸精度も、
出荷ミスもすべて悪化していきます。
まず行うべき改善は次の3つです:
- 代表SKUを決め、重複を一掃する
- 商品番号ルールを統一し、命名規則を明文化
- JANとの紐づけを整理して、検索性を上げる
商品マスタが整うだけで、在庫管理の“土台のゆがみ”がほぼ解消します。
👉 さらに詳しく
→ 商品番号ルール・SKUマスタ設計ガイド
🟦 H3-2|ステップ2:棚番・ロケーションを標準化する
在庫管理で“探す時間”が多い会社は、ほぼ例外なく
棚番(ロケーション)が整備されていない か、
Excelに反映されていない ことが原因です。
棚番が曖昧だと:
- 商品が見つからない
- 置き場所が担当者ごとに違う
- 棚替えの連絡が共有されない
- ピッキング順序が最適化できない
こうして現場の作業時間が増え、
結果として在庫ズレも棚卸の遅延も発生します。
改善ステップはシンプルです:
- 倉庫マップを作る
- 棚番ルール(大分類 → 中分類 → 小分類)を決める
- すべての商品に棚番を割り当てる
- Excelではなく「棚番マスタ」を作って管理する
棚番ルールの標準化は、
エクセル管理で残る最も大きな改善余地です。
👉 詳細はこちら
→ 棚番・ロケーションコードの作り方
🟦 H3-3|ステップ3:発注点方式で“欠品ゼロ”を実現する
エクセル在庫管理で最後に大きな壁となるのが、
発注点の管理(いつ・どれだけ仕入れるか) です。
エクセルでは売れ行きの変動を読みづらいため、
- 欠品が多い
- 在庫が過剰に積み上がる
- 勘と経験による発注が続く
といった問題につながります。
発注点方式を導入すると、次のような改善が起きます:
- 売れ筋商品が切れなくなる
- 過剰在庫が減る
- 担当者による発注量のブレが消える
- 発注判断の属人化が消滅する
最初はシンプルな発注点で十分です:
- 発注点 =(リードタイム × 1日の平均販売数)+ 安全在庫
- 安全在庫は販売の変動を吸収する“クッション”
Excelでも計算できますが、複数SKUでは管理が追いつかなくなります。
👉 仕組みはこちら
→ 発注点方式と安全在庫の基本
エクセル管理の限界・SKU整理・棚番ルールなど、初心者がまず整えるべきポイントをまとめています。 導入を検討する前に「現場で何を直すべきか」がわかります。
👤 筆者プロフィール|DXジュン(Apice Technology 代表)
「tecn」を運営している DXジュン です。
Apice Technology株式会社の代表として、20年以上にわたり
Web制作・業務改善DX・クラウドシステム開発に携わっています。
普段は企業の現場課題に寄り添いながら、
在庫管理システム/予約システム/求人管理/受発注システム/クラウドソーシング など、
中小企業の仕事を“ラクにするツール”を作っています。
tecn では、業務改善のリアルや、Webシステムの仕組み、 そして「技術が生活をちょっと楽しくしてくれる」ような 日常×デジタルのヒントをゆるく発信しています。
現在の注力テーマは 在庫管理のDX化。 SKU・JAN・棚卸・リアルタイム連携など、 現場で役立つ情報を発信しつつ、 自社のクラウド在庫管理システムも開発・提供しています。
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