新人でも迷わない倉庫を作る|棚番・マップ化で教育コストを減らす方法 B-3
H2-1 なぜ新人が倉庫で迷うのか
- H3-1 「場所がわからない」「どこに置いたかわからない」が生産性を下げる
- H3-2 棚番・マップがない現場で起きる5つの典型的トラブル
- H3-3 教育コストの大半は“倉庫の構造を覚える時間”に使われている
H2-1 なぜ新人が倉庫で迷うのか
H3-1 「場所がわからない」「どこに置いたかわからない」が生産性を下げる
多くの倉庫では、新人が入社して最初に直面する課題が「モノの場所がわからない」という問題です。
倉庫内には、同じような棚・箱・通路が並び、しかも配置ルールが人によって異なる場合も多い。
結果として、在庫を探す時間が長くなり、ピッキング・出荷作業が遅延することにつながります。
新人にとっては、どこに何があるのかを理解するまでに時間がかかり、
ベテランにとっては「案内役」に時間を取られてしまう。
つまり、「探す」時間と「教える」時間が双方の生産性を削っているのです。
H3-2 棚番・マップがない現場で起きる5つの典型的トラブル
棚番(ロケーション番号)やマップが整備されていない倉庫では、
以下のようなトラブルが日常的に発生します。
- 商品を探し回る時間が長い
→ ピッキング1件あたりの時間が増え、1日の出荷件数が減少。 - 在庫が“あるはずなのに見つからない”
→ システム上では存在するが、現物の場所が不明で出荷遅延に。 - 誤出荷が発生する
→ 似た商品・箱・型番を取り違えるミスが頻発。 - 補充や棚卸が後回しになる
→ 棚構造が不明確なため、補充位置を特定できない。 - 属人化が進み、担当が休むと業務が止まる
→ 「あの棚は〇〇さんしか分からない」状態に。
これらのトラブルは、個々のスキルや注意力ではなく、倉庫設計そのものの問題です。
棚番やマップを整備しない限り、教育を繰り返しても根本的な改善は難しいでしょう。
H3-3 教育コストの大半は“倉庫の構造を覚える時間”に使われている
新人教育の現場では、実際の作業よりも倉庫の構造を覚えることに時間が割かれているケースが多くあります。
どの棚に何があるのか、どの通路から回るのが早いのか――これらを頭で覚えるには時間がかかります。
とくに複数の拠点や季節変動のある倉庫では、配置替えが発生するたびに再教育が必要となり、
教育コストが倍増します。
このような「人が覚える」前提の教育ではなく、
誰が来ても迷わない“構造的な仕組み”=棚番とマップの整備が必要です。
倉庫を“人が覚える場所”から“誰でも使えるシステム化された場所”へ――
これが、現場改善の第一歩です。
H2-2 棚番ルール整備で“探さない倉庫”を作る
- H3-1 倉庫を「住所化」する発想:エリア・棚・段の3階層構造
- H3-2 誰が見ても分かる棚番ルールの付け方
- H3-3 数字とアルファベットをどう組み合わせると効率が良いか
H2-2 棚番ルール整備で“探さない倉庫”を作る
H3-1 倉庫を「住所化」する発想:エリア・棚・段の3階層構造
“探さない倉庫”を実現する第一歩は、倉庫を「住所のある空間」として再定義することです。
街に住所があるように、倉庫の中のすべての商品にも「どこにあるか」を示す住所が必要です。
たとえば、以下のような 3階層構造 で考えると整理がしやすくなります:
- エリア(A〜Z):ゾーンや商品カテゴリ単位
- 棚番号(01〜99):棚そのものの識別子
- 段番号(01〜09):棚の段・高さを示す
例)
👉 「A-12-03」=Aゾーンの12番棚・3段目
このように ルールが明確で一貫している ことで、
新人でも「Aゾーン→12番棚→3段目」という順にたどるだけで迷わず商品にたどり着けます。
H3-2 誰が見ても分かる棚番ルールの付け方
棚番ルールを整える際は、「現場の誰が見ても理解できる」ことが最優先です。
数字やアルファベットを難解にすると、逆に混乱を招きます。
設計のポイントは以下の通りです。
- ゾーンごとに色や記号を付ける(例:Aゾーン=青、Bゾーン=緑)
- 英字は大文字・半角で統一(例:「A-05-02」ではなく「A-05-02」にしない)
- 左から右、上から下に読み進める並び順を固定
- 臨時棚や季節棚には専用プレフィックスを付ける(例:S-、T-)
また、棚ラベルを印刷する際には、フォントサイズと配置位置も統一しましょう。
見た目の統一感は視認性を高め、現場作業スピードを大きく左右します。
H3-3 数字とアルファベットをどう組み合わせると効率が良いか
棚番設計では、「英字×数字の組み合わせ」 が最も管理しやすい形式です。
ただし、英字と数字の意味づけが曖昧だと、後々の拡張性に影響します。
以下はおすすめの構成例です。
| 階層 | 役割 | 記号例 | 意味 |
|---|---|---|---|
| 英字 | エリア | A〜F | 商品カテゴリ・作業区分(例:A=電子部品、B=工具) |
| 2桁数字 | 棚番号 | 01〜20 | 棚単位(ロケーション) |
| 2桁数字 | 段番号 | 01〜10 | 棚の上下位置(段) |
📦 例:C-07-04
→ Cエリア(消耗品)の7番棚・4段目に在庫がある。
この形式は、人が見ても機械が読んでも理解できる 構造です。
将来的にバーコードやQRコードを使って在庫を読み取る場合も、
「C-07-04」というコード体系をそのまま印字・登録できます。
H2-3 マップ化で視覚的に理解できる倉庫を設計する
- H3-1 “倉庫マップ”は新人教育の最強ツール
- H3-2 Excel/PowerPointでもできる簡易マップの作り方
- H3-3 クラウド上で共有できる「デジタル倉庫マップ」の仕組み
H2-3 マップ化で視覚的に理解できる倉庫を設計する
H3-1 “倉庫マップ”は新人教育の最強ツール
棚番を整備しても、倉庫全体の位置関係を頭の中で把握するのは難しいものです。
その問題を解決するのが 「倉庫マップ」=倉庫全体の見取り図 です。
マップがあると、新人は“自分が今どこにいるのか”“どの棚を探せばいいのか”を瞬時に理解できます。
ベテランの説明に頼らずとも、マップを見れば行動できる――これが教育コストを劇的に下げる最大の要因です。
また、倉庫マップは新人教育だけでなく、以下のようなシーンでも役立ちます:
- 棚卸作業の効率化(どの棚を担当するかを視覚的に割り振り)
- 動線設計(ピッキングルートの最短化)
- 倉庫レイアウト変更時の影響把握
つまり、マップ化は「教育用ツール」でありながら、「業務改善ツール」でもあるのです。
H3-2 Excel/PowerPointでもできる簡易マップの作り方
倉庫マップというと「CADのようなソフトが必要」と思われがちですが、
実際は ExcelやPowerPointでも十分に作成可能 です。
✅ 基本の作り方
- 棚・通路をセルで表現(例:A列=通路、B〜G列=棚)
- 棚番号を入力し、色分けしてゾーンを可視化
- 通路方向・出入口・作業エリアを矢印で示す
これだけでも、「全体の構造」がひと目でわかるようになります。
また、PowerPointを使えば矢印や棚アイコンを配置して、より直感的な図を作れます。
印刷して現場掲示するだけでも、新人の迷いを大幅に減らせます。
📌 ポイント
- “美しさ”よりも“わかりやすさ”を優先
- A3サイズで印刷し、作業動線を赤線で表示
- 棚番号と実棚のラベル表記を一致させる
H3-3 クラウド上で共有できる「デジタル倉庫マップ」の仕組み
最近では、GoogleスプレッドシートやNotion、Miroなどのツールを使って、
クラウド上で倉庫マップを共有・更新する運用が一般的になっています。
クラウド化することで得られるメリットは大きく、
- いつでも最新状態を共有できる(棚移動や在庫変更に即時対応)
- 複数拠点間で同じルールを適用できる
- スマホ・タブレットで現場確認が可能
特に、在庫管理システムと連携する場合は、
棚番号やロケーションコードをクリックするだけで在庫一覧を表示するような設計も可能です。
このような「デジタル倉庫マップ」は、
紙のマップでは追いつかないスピード・正確さ・共有性を同時に実現します。
在庫が合わない、棚卸が終わらない──。
そんな「人手頼みの在庫管理」を根本から変える方法を解説しています。
在庫を仕組みで回すための“第一歩”として、こちらの記事もぜひご覧ください。
👉 在庫管理がうまくいかないのは「人」ではなく「仕組み」|中小企業が3日で変わるクラウド導入の現場
機能はシンプル。でも、使えば業務効率がぐんと上がる。
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手作業から脱却し、在庫の見える化を実現しよう。 アピステクノロジー(株)

H2-4 新人教育を効率化する“見える化ルール”
- H3-1 配置図・マニュアル・写真付き資料で現場を標準化
- H3-2 棚番・マップ情報を共有フォルダやクラウドで即確認
- H3-3 新人が1日で覚える“ルール可視化”のコツ
H2-4 新人教育を効率化する“見える化ルール”
H3-1 配置図・マニュアル・写真付き資料で現場を標準化
新人教育の最大の課題は、「人によって教え方が違う」ことです。
現場ベテランの口伝えや感覚的な指導に頼ると、覚える内容がバラバラになり、
「〇〇さんに習ったやり方と違う」といった混乱が起きやすくなります。
その解決策が、“見える化された教材”による標準化です。
- 配置図(倉庫マップ):全体の棚構造を一目で理解できる
- 作業マニュアル:ピッキングや補充手順を文書化
- 写真付き資料:現物の棚・商品の写真を使って位置関係を視覚的に伝える
特に写真資料は効果的で、
「この棚、この商品、このラベル」と具体的に見せることで、現場で迷う時間を大幅に削減できます。
紙よりもPDF・スライド形式で管理し、更新時に即差し替えできる仕組みを整えておくのがポイントです。
H3-2 棚番・マップ情報を共有フォルダやクラウドで即確認
教育効果を最大化するには、最新情報をすぐに確認できる環境を整えることが欠かせません。
Googleドライブ・Dropbox・SharePointなどの共有フォルダを活用し、
棚番表やマップを常に最新版に保つ運用を取り入れましょう。
さらに、スマホやタブレットで参照できるようにしておけば、
新人が現場で「迷ったらその場で確認」できる状態になります。
クラウド上で共有することで:
- 棚番号変更やレイアウト更新を即時反映
- 全員が同じ資料を見られる(古い版の混在を防ぐ)
- 在庫管理システムやGoogleスプレッドシートとも連携可能
これにより、「教える→更新→共有」がリアルタイムで回る体制を実現できます。
H3-3 新人が1日で覚える“ルール可視化”のコツ
“倉庫を覚える教育”をやめて、“倉庫を理解できる仕組み”を作る。
これが、教育時間を最短化する基本方針です。
新人が1日で動けるようにするには、次の3つの工夫が効果的です。
- 「ルールを図で示す」
棚番号・通路方向・ピッキング順序などを図表化。文章説明を最小限に。 - 「動線を色で示す」
棚のゾーンや出荷ルートを色分けして、視覚的にルールを伝える。 - 「覚えさせない仕組み」
現場にマップ・QRコード・ラベルを貼り、見ればわかる状態に。
これらを整えるだけで、従来2〜3日かかっていた新人教育が1日で戦力化できるケースもあります。
つまり、“記憶”ではなく“視覚”で理解できる倉庫づくりこそが、
教育の最短ルートなのです。
H2-5 マップ化と棚番整備を定着させる仕組み
- H3-1 移動・拡張・レイアウト変更時の更新ルール
- H3-2 棚番更新時の通知・共有フローを整備する
- H3-3 属人化を防ぐ「メンテナンス担当者」の設置
H2-5 マップ化と棚番整備を定着させる仕組み
H3-1 移動・拡張・レイアウト変更時の更新ルール
倉庫の棚番やマップは、一度整備したら終わりではありません。
在庫拡張・棚増設・レイアウト変更など、現場の変化に合わせて更新が必要です。
更新を怠ると、すぐにマップと実際の棚配置がズレてしまい、
「A-03棚ってどこ?」「地図と違う…」という混乱が再発します。
そのためには、“更新のルール”を最初に決めておくことが重要です。
- 棚を移動する場合は、必ず事前申請+承認制にする
- 棚を新設・削除する場合は、マップ担当が更新責任を負う
- レイアウト変更後は、全員に周知(掲示・メール・チャット通知)
こうした仕組みを定めておけば、倉庫が拡大しても「最新状態を維持する」文化が定着します。
H3-2 棚番更新時の通知・共有フローを整備する
マップや棚番を更新しても、「現場に伝わっていない」状態では意味がありません。
更新のたびに周知・共有が自動的に行われる通知フローの設計が不可欠です。
おすすめは次のようなシンプルな運用ルールです:
- 更新者が変更内容をクラウドシートに記録
- 更新ログを自動でチャット(Slack・Teams)通知
- 現場掲示板・モニターで更新情報を即反映
たとえば、Googleスプレッドシートを使う場合は「最終更新者」「更新日時」「変更箇所」を記録し、
GAS(スクリプト)でSlack通知するだけでも、十分に自動化が可能です。
このような“情報伝達の見える化”により、
「知らなかった」「聞いてない」といった人的ミスを防げます。
H3-3 属人化を防ぐ「メンテナンス担当者」の設置
棚番やマップの整備は、最初こそ勢いで整えられても、
メンテナンスを誰も担当しないと半年で形骸化します。
そのため、現場責任者とは別に、
**「マップ・棚番メンテナンス担当者」**を1名以上設置しておくのが理想です。
担当者の役割は以下の3点です:
- 定期的に現場とマップを照合(ズレの有無を確認)
- 新設棚・廃棄棚の反映
- 更新ルールの見直し・承認フローの管理
また、属人化を防ぐためには、引き継ぎ可能な運用マニュアルを作っておくことも重要です。
「担当者しか分からない状態」は、ルールが崩壊する最大の原因です。
このように“更新を仕組み化”することで、マップと棚番が常に現場と同期した状態を維持できるようになります。
在庫が合わない、棚卸が終わらない──。
そんな「人手頼みの在庫管理」を根本から変える方法を解説しています。
在庫を仕組みで回すための“第一歩”として、こちらの記事もぜひご覧ください。
👉 在庫管理がうまくいかないのは「人」ではなく「仕組み」|中小企業が3日で変わるクラウド導入の現場
機能はシンプル。でも、使えば業務効率がぐんと上がる。
アピス在庫管理 ― 小規模事業者・店舗のための“ちょうどいいDX”。
手作業から脱却し、在庫の見える化を実現しよう。 アピステクノロジー(株)

H2-6 まとめ|“誰でも探せる倉庫”がチーム力を高める
- H3-1 新人教育の効率化=現場の見える化から
- H3-2 棚番×マップ整備で“現場依存”をゼロに
- H3-3 次に読むべき関連記事(内部リンク候補)
・商品を探す時間を半減!棚番ルールを整える|倉庫の見える化と効率化の基本
・ピッキングリストをExcelから卒業!更新遅延を防ぐ|リアルタイム在庫連携の仕組み
・属人化した在庫管理が招く5つのリスクと解決法
H2-6 まとめ|“誰でも探せる倉庫”がチーム力を高める
H3-1 新人教育の効率化=現場の見える化から
新人教育の時間を短縮する最大の方法は、人ではなく仕組みで教えることです。
「棚番ルール」「倉庫マップ」「写真付きマニュアル」などを整備するだけで、
新人が現場で迷う時間が激減し、即戦力化が進みます。
つまり、教育効率化の出発点は、“見える化”による標準化。
教え方の差をなくし、誰が教えても同じ結果が得られる状態を目指しましょう。
H3-2 棚番×マップ整備で“現場依存”をゼロに
棚番やマップは、一見すると単なる整理ツールに見えますが、
本質は 「現場の情報を共有知化する仕組み」 にあります。
誰が倉庫を担当しても、同じルール・同じ地図で動ける。
これが“現場依存からの脱却”であり、組織としての安定運用を支える鍵です。
属人化がなくなれば、急な欠勤や人事異動にも対応でき、
在庫精度・出荷スピード・教育コスト、すべての面でチーム力が高まります。
H3-3 次に読むべき関連記事(内部リンク候補)
・商品を探す時間を半減!棚番ルールを整える|倉庫の見える化と効率化の基本
・ピッキングリストをExcelから卒業!更新遅延を防ぐ|リアルタイム在庫連携の仕組み
・属人化した在庫管理が招く5つのリスクと解決法
この章で伝えるメッセージは、
「倉庫を“探す場所”から、“わかる場所”に変える。」
それが中小企業の生産性を底上げし、チーム全体の力を引き出す第一歩です。





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