在庫管理システム導入・最初の30日【第5回】|「回っている状態」を言語化する
在庫管理システムを導入して、しばらく使ってみたものの、
こんな気持ちが出てくる頃ではないでしょうか。
- 「これって、うまくいっているんだろうか?」
- 「合っていないところはあるけど、失敗なのかは分からない」
- 「このまま続けていいのか、立ち止まるべきか判断できない」
第5回は、まさにこのモヤモヤが一番強くなるタイミングを扱います。
ここで大事なのは、
在庫が合っているかどうかでも、
ルールが完成しているかどうかでもありません。
判断すべきなのは、ただ一つです。
「今、止まっていないか?」
在庫管理は、
「正しいかどうか」よりも
「回っているかどうか」で見たほうが、ずっと安全です。
この回では、
- 「回っている」と言える状態とは何か
- 回っていない状態との違い
- それを言葉にする意味
を、感覚論ではなく、現場で使える判断軸として整理します。
ここまで来ていれば、
もう「失敗しているかどうか」で悩む段階は終わっています。
第5回のゴールは、
続ける・整える・相談するという次の選択を、
自分たちで判断できる状態になることです。
H2-1|「回っている」とは、どういう状態なのか
H3-1|完璧に合っている必要はない
- 数字がズレていてもOK
- 未処理が少し残っていても問題ない
H3-2|「止まっていない」ことが最重要
- 入出庫が継続している
- 誰か一人に依存していない
H2-1|「回っている」とは、どういう状態なのか
在庫管理システムを導入してしばらくすると、
多くの現場でこんな疑問が出てきます。
「これって、ちゃんと回っているんだろうか?」
在庫数はまだズレている。
未処理のデータも少し残っている。
完璧とは言えない。
それでも――
回っているかどうかは、
実は「数字」だけでは判断できません。
この回では、
在庫管理における「回っている状態」を
判断できる言葉にしていきます。
H3-1|完璧に合っている必要はない
まず、はっきりさせておきたいことがあります。
在庫が完璧に合っている=回っている
ではありません。
数字がズレていてもOK
導入初期〜30日程度で、
- 在庫数が微妙に合わない
- 一部の商品だけズレが残っている
という状態は、ごく普通です。
むしろ、
- ズレが見えている
- 「ここが怪しい」と話題にできる
この状態は、
在庫管理が“見えるようになった”証拠でもあります。
未処理が少し残っていても問題ない
- 入力が後追いになる日がある
- 一部の処理が翌日に回る
これも、導入初期ではよくあることです。
大事なのは、
- 未処理が把握できているか
- 放置ではなく、戻れる前提になっているか
であって、
「ゼロにすること」ではありません。
H3-2|「止まっていない」ことが最重要
在庫管理において、
本当に致命的なのは ズレ ではなく 停止 です。
入出庫が継続している
回っている状態とは、
- 毎日でなくてもいい
- 完璧でなくてもいい
入出庫の入力が、止まっていない状態のこと。
多少ズレていても、
- 今日も入力されている
- 明日も使われる前提になっている
これが維持できていれば、
在庫管理は生きています。
誰か一人に依存していない
もう一つの重要なポイントは、
「その人がいないと止まるか?」
です。
- 特定の人しか触れない
- その人が忙しいと入力が止まる
この状態は、
数字が合っていても「回っている」とは言えません。
逆に、
- 複数人が触れる
- 迷いながらでも処理できる
この状態なら、
多少ズレていても 回っています。
ここまでで分かるのは、
- 回っている=正確
- 回っていない=不正確
ではない、ということ。
H2-2|回っていない状態との決定的な違い
H3-1|回っていない状態のサイン
- 触る人が限られている
- 入力が後回しになる
H3-2|回っている状態のサイン
- 迷っても戻れる
- 誰が触っても詰まらない
H2-2|回っていない状態との決定的な違い
「回っているかどうか」は、
感覚ではなく 状態の違い で見分けられます。
ここでは、
回っていない状態 と 回っている状態 の決定的な差を、
そのまま現場でチェックできる形で整理します。
H3-1|回っていない状態のサイン
まずは、要注意な状態から。
これは「失敗」ではありませんが、
放置すると止まりやすい兆候です。
触る人が限られている
- 特定の1人(または少人数)しか触れない
- 「それは◯◯さんじゃないと分からない」となる
- 忙しい・不在になると入力が止まる
この状態では、
- システム自体はあっても
- 運用は“属人化”しています
数字が合っていても、
この状態は 回っているとは言えません。
入力が後回しになる
- 「あとでまとめてやろう」が増える
- 数日分が溜まってから入力する
- 忙しい日は“今日はやらない”になる
これは、
- 面倒だから、ではなく
- 迷いが多い状態で起きやすい現象です
入力が後回しになるほど、
- 判断が重くなり
- 次に触るハードルが上がり
結果として、
止まりやすいシステムになります。
H3-2|回っている状態のサイン
一方で、
「回っている状態」には明確な共通点があります。
迷っても戻れる
回っている現場では、
- 迷うこと自体は起きます
- ただし、戻る場所が決まっている
たとえば、
- どの時点を「正」とするか
- 迷ったら、どのルールに戻るか
が共有されている。
だから、
- 完璧じゃなくても進める
- 判断を引きずらない
これが、
回り続ける一番の理由です。
誰が触っても詰まらない
回っている状態とは、
- 上手い人がいる状態ではなく
- 詰まらない設計になっている状態。
具体的には、
- 新しい人が触っても止まらない
- 判断に悩んでも、処理は進む
- 「これどうする?」が致命傷にならない
この状態になると、
- 精度は後から自然に上がる
- ズレは「問題」ではなく「材料」になる
在庫管理は、
ここから 安定フェーズ に入っていきます。
回っていない状態と、回っている状態。
その違いは、人の腕前ではありません。
- 戻れるか
- 止まらないか
この2点で見れば、
今の状態がどちらに近いかは、
はっきり判断できるはずです。
H2-3|「回っている状態」を言葉にする意味
H3-1|言語化すると、責めなくて済む
- 感覚論が減る
- 人ではなく状態を見られる
H3-2|判断基準が共有できる
- 続けるか、止めるか
- 次に進むか、整え直すか
H2-3|「回っている状態」を言葉にする意味
在庫管理が安定し始めるかどうかは、
仕組みそのものよりも、
「状態をどう捉えているか」で決まります。
このタイミングで
「回っている状態」を言葉にするのは、
評価や改善のためではありません。
現場を疲弊させないためです。
H3-1|言語化すると、責めなくて済む
言葉がない状態では、
どうしても会話がこうなりがちです。
- 「ちゃんと入力してないからズレた」
- 「やり方が悪いんじゃないか」
- 「誰がやったの?」
これは、人を責めたいわけではなく、
判断の軸がないから起きます。
感覚論が減る
「回っている状態」が言語化されていると、
- 合っている/合っていない
- 良い/悪い
ではなく、
- 今は回っているか
- どこで止まりかけているか
という話ができます。
すると、
- 感覚的な不安
- 個人の印象
が減り、
状態ベースの会話に変わります。
人ではなく状態を見られる
一番大きい変化はここです。
- 誰がミスしたか
- 誰が遅れたか
ではなく、
- どこで判断が詰まったか
- どのルールが重かったか
を見るようになる。
これは、
- 現場を守る
- 継続を優先する
という意味で、
とても重要です。
H3-2|判断基準が共有できる
言語化のもう一つの意味は、
次の判断を揃えることです。
続けるか、止めるか
30日運用していると、
必ず出てくる迷いがあります。
- このまま続けていいのか
- 一度止めた方がいいのか
ここで必要なのは、
- 完璧な数字
- KPIや評価指標
ではありません。
「今、回っていると言えるか?」
この一言で、
判断が揃います。
次に進むか、整え直すか
同じように、
- 機能を増やすか
- もう一度整え直すか
も、
- 回っているなら進む
- 止まりかけているなら整える
という、
シンプルな判断ができます。
これができるようになると、
- 焦って次に進まない
- 不安で立ち止まりすぎない
ちょうどいい判断ができるようになります。
「回っている状態」を言葉にすることは、
評価のためでも、
正しさを証明するためでもありません。
- 責めないため
- 迷わないため
- 次に進む準備のため
この講座が目指しているのは、
うまくやることではなく、
続けられる状態を作ること。
H2-4|この時点で言語化すべき3つの観点
H3-1|作業の流れは止まっていないか
- 毎日触られているか
- 処理が溜まりすぎていないか
H3-2|迷ったときの「逃げ道」はあるか
- 基準点に戻れるか
- 誰に聞けばいいか分かるか
H3-3|属人化が起きていないか
- 特定の人しか触れない状態になっていないか
- 不在時に止まらないか
H2-4|この時点で言語化すべき3つの観点
「回っているかどうか」を言葉にするとき、
数字や精度を見る必要はありません。
この時点で見るべきなのは、
仕組みとして息をしているかどうかです。
そのために、
次の3つの観点だけを言語化しておきます。
H3-1|作業の流れは止まっていないか
まず一番大事なのは、
止まっていないことです。
毎日触られているか
- 誰かが毎日ログインしている
- 入出庫が少しでも入力されている
量は関係ありません。
「今日も触られたか」がすべてです。
触られなくなった瞬間、
在庫管理は止まり始めます。
処理が溜まりすぎていないか
多少の未処理は問題ありません。
- その日の処理が翌日に回る
- 忙しい日はまとめて入力する
これは自然な運用です。
ただし、
- どんどん溜まっていく
- 触る前から気が重くなる
状態になっていたら、
どこかに引っかかりがあります。
ここで見るべきなのは
正確さではなく、詰まり感です。
H3-2|迷ったときの「逃げ道」はあるか
次に見るのは、
迷ったときにどうしているかです。
基準点に戻れるか
第4回で決めた「1本ルール」。
- 入庫はいつを正とするか
- 出庫はどの操作を基準にするか
迷ったときに
「ここに戻ればいい」と言える場所があるか。
それだけで、
現場のストレスは大きく下がります。
誰に聞けばいいか分かるか
もう一つの逃げ道は、人です。
- この場合は誰に聞く
- 判断に迷ったらここに戻す
これが曖昧だと、
- 自己判断が増える
- 入力が後回しになる
という流れになります。
完璧な答えがなくても、
聞き先が分かっていることが重要です。
H3-3|属人化が起きていないか
最後に見るのが、
人への依存です。
特定の人しか触れない状態になっていないか
- あの人がいないと分からない
- 操作できるのが1人だけ
これは、
回っているようで回っていません。
一時的なら問題ありませんが、
この状態が固定化すると、
- その人が忙しい
- 休む
- 異動する
だけで、在庫管理が止まります。
不在時に止まらないか
理想は、
- 完璧でなくてもいい
- 少し遅れてもいい
から、
誰かが代わりに触れる状態です。
この時点で
「完璧に引き継げる」必要はありません。
- 触れる
- 戻れる
- 聞ける
この3つがあれば、
属人化は“致命傷”になりません。
ここまで言語化できていれば、
在庫管理はもう
立ち上がり始めています。
H2-5|この30日で「決めきらなくていいこと」
H3-1|詳細な運用ルール
- 文書化はまだ先
- 体感を優先する
H3-2|評価・KPIの最適化
- 数字で縛らない
- まずは感触を見る
H2-5|この30日で「決めきらなくていいこと」
30日間を走ってくると、
「そろそろ決めないといけないのでは?」
という気持ちが必ず出てきます。
でも、このタイミングで
無理に決めなくていいことが、はっきりあります。
それを先に決めてしまうと、
むしろ在庫管理は重くなります。
H3-1|詳細な運用ルール
文書化はまだ先
- 入出庫の細かい手順
- イレギュラー時の対応
- ケース別の処理フロー
これらを、
この30日で完成させる必要はありません。
なぜなら、今見えている現象は、
- 一部のパターン
- 限られた状況
- たまたま起きたズレ
にすぎないからです。
この段階で文章にしてしまうと、
あとで必ず「現実と合わないルール」になります。
体感を優先する
今、優先すべきなのは、
- どこで迷うか
- どこで止まりそうになるか
- どこなら無理なく続くか
という体感です。
言葉にするのは、
それが十分に溜まってからで大丈夫です。
H3-2|評価・KPIの最適化
数字で縛らない
- 入力率
- 処理スピード
- 差異率
こうした数字は、
今は見なくていいものです。
この30日は、
- 慣れる
- 触る
- 止まらない
ことが最優先。
数字で縛ると、
- 正しくやろうとして止まる
- 怒られないために触らなくなる
という、
一番避けたい状態が生まれます。
まずは感触を見る
この時点で見るべきなのは、
KPIではなく感触です。
- 「なんとなく回ってきた」
- 「前より迷わなくなった」
- 「触るのが苦じゃなくなった」
それが出てきていれば、
在庫管理は成功方向に進んでいます。
数字を整えるのは、
回っている感覚を掴んでからで十分です。
この30日は、
「決める期間」ではありません。
- 決めすぎない
- 縛らない
- 評価しすぎない
その余白があるからこそ、
次の判断ができます。
H2-6|「回っている」と言えたら、次に進める
H3-1|続ける/調整する/相談する
- 無理に進まない
- 立ち止まる判断もOK
H3-2|この判断ができる時点で、導入は成功している
- 失敗ではない
- 次のフェーズに進める状態
H2-6|「回っている」と言えたら、次に進める
ここまで来て、
「完璧ではないけれど、止まってはいない」
そう言える状態になっていれば、もう十分です。
在庫管理において大事なのは、
正解にたどり着くことではなく、次の判断ができること。
この段階で、ようやく次に進む準備が整います。
H3-1|続ける/調整する/相談する
この時点での選択肢は、実は3つしかありません。
- このまま続ける
- 少しだけ調整する
- 一度相談する
どれを選んでも、間違いではありません。
無理に進まない
「ここまで来たから、もっと整えなきゃ」
「次のフェーズに進まないと失敗になる」
そう考える必要はありません。
今の状態を見て、
- まだ様子を見たい
- 少し手を入れたい
- 誰かの視点を借りたい
そう感じるなら、その感覚は正しいです。
立ち止まる判断もOK
在庫管理は、
止まらないことが大事なのであって、
進み続けることが正解ではありません。
立ち止まれるということは、
- 状態を把握できている
- 感情ではなく判断ができている
という証拠です。
H3-2|この判断ができる時点で、導入は成功している
「続けるか」「整えるか」「相談するか」
この判断ができている時点で、
在庫管理システムの導入は、
すでに成功しています。
失敗ではない
- ズレがある
- ルールが未完成
- 数字がまだ安定していない
それらは、失敗ではありません。
むしろ、
ちゃんと使われている証拠です。
次のフェーズに進める状態
この30日で得たものは、
- 正解の運用
- 完成したルール
ではありません。
- 判断できる材料
- 無理なく回る感覚
- 次に触る場所の見当
これが揃っていれば、
もう次のフェーズに進めます。
まとめ|在庫管理は「回っているかどうか」で判断する
- 合っているかより、止まっていないか
- 正しいかより、続いているか
- 言語化できれば、次に進める
まとめ|在庫管理は「回っているかどうか」で判断する
在庫管理は、
合っているかどうかで評価するものではありません。
一番大切なのは、
止まっていないかどうかです。
数字が少しズレていても、
ルールが未完成でも、
毎日触られていて、処理が続いているなら――
それは「回っている状態」です。
正しいかどうかより、
続いているかどうか。
この視点に切り替えられると、
在庫管理は一気に楽になります。
そして、「今は回っている」「ここが詰まりやすい」
そうやって言語化できた瞬間に、
次に進む準備は整っています。
整えるのか、続けるのか、相談するのか。
どの選択でも構いません。
回っている状態を判断できている時点で、
在庫管理の導入は、もう成功しています。
ここまで読んだ方へ|在庫管理の「次の一歩」のご案内
ここまで読んでいただき、ありがとうございます
この講座では、「完璧を目指さない在庫管理」、 「現場を疲弊させない導入」、 「止まらない仕組みづくり」 を一貫してお伝えしてきました。
この講座の考え方は、アピス在庫管理システムの思想そのものです
実はこの講座でお話ししてきた考え方は、すべて 「アピス在庫管理システム」という小規模事業者向けの在庫管理システムを設計する中で生まれたものです。
- SKUや棚番を完璧に決めなくても始められる
- Excelからの段階導入を前提にできる
- 全数棚卸を強制しない(理想の一つとして扱う)
- ルールを重くせず、止まらない運用を優先する
その代わり、「小さな会社が、失敗せずに始められる」ことに本気で振り切っています。
ここまで読んで「うちも何とかしたい」と思った方へ
- 売り込みはしません(合わない場合は「やめた方がいい」とお伝えします)
- 今のやり方(Excel運用など)を否定しません
- 「導入するか迷っている」段階でも大丈夫です









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