在庫管理システム導入・最初の30日【第2回】|ズレ始めたときにやっていいこと・ダメなこと
在庫管理システムを導入して、
しばらく使い始めた頃——多くの現場で、必ず出てくる言葉があります。
「あれ、在庫が合わない…」
この“ズレ”に気づいた瞬間、
一気に不安が強くなる方は少なくありません。
- やっぱり導入が早すぎたのではないか
- 最初の設定を間違えたのではないか
- このまま続けて大丈夫なのか
こうした気持ちが頭をよぎるのは、とても自然なことです。
ズレ始めるのは、失敗ではありません
先にお伝えしておくと、
導入初期にズレが出ること自体は、失敗ではありません。
むしろ、
- 入出庫のタイミング
- 人ごとの入力の癖
- SKUや棚番の解釈
こうした「現場のズレ」が、
初めて見えるようになった証拠でもあります。
Excel管理のときから、
実はズレは存在していた。
ただ、それが見えていなかっただけ——というケースも多いのです。
問題は「ズレ」そのものではなく、対応のしかた
在庫がズレたとき、
現場で起きがちな行動があります。
- 一度入力を止める
- 元のExcelに戻す
- ルールを一気に増やす
どれも「正しくしたい」という善意から出る行動ですが、
実はこれが一番、システムを止めてしまう原因になります。
この第2回では、
- ズレが起きたときに「やっていいこと」
- 絶対に避けたほうがいい対応
- ズレを“壊さずに”受け止める考え方
を整理していきます。
ズレたときこそ、立て直しの分かれ道
在庫管理システムは、
ズレた瞬間に失敗が決まるものではありません。
ズレたときに、どう判断するか。
その積み重ねが、
「続く運用」になるか、「止まる導入」になるかを分けます。
この回を読み終える頃には、
ズレに直面したときに、
「慌てなくていい理由」が分かるはずです。
H2-1|導入後に「ズレ始める」のは失敗ではない
H3-1|ズレは“必ず起きる前提”で考えていい
- 理論通りに動く現場は存在しない
- 最初にズレない方がむしろ危険
H3-2|ズレ=失敗だと思ってしまう理由
- Excel時代の「合わない=大問題」思考
- 導入初期に完璧を求めてしまう心理
H3-3|ズレが出た=データが集まり始めたサイン
- 入力されている証拠
- システムが“使われている状態”
👉 ここで
「ズレてOK/怖がらなくていい」宣言
H2-1|導入後に「ズレ始める」のは失敗ではない
在庫管理システムを導入してしばらくすると、
多くの現場で、必ずと言っていいほどこうした声が出ます。
- 在庫数が合わない
- 入出庫のタイミングがズレている
- 思っていた数字と違う
この瞬間に、
「やっぱり失敗したのでは…」
と不安になる方は、とても多いです。
ですが、まず最初にお伝えしたいことがあります。
導入後にズレ始めるのは、失敗ではありません。
むしろ、自然で、正常な状態です。
H3-1|ズレは“必ず起きる前提”で考えていい
在庫管理をシステム化したからといって、
現場が理論通りに動くことはありません。
- 入力のタイミングが人によって違う
- 忙しい時間帯は後回しになる
- 例外的な動きが必ず発生する
どんなに優れた仕組みでも、
現場は「人」が動かしています。
だからこそ、
導入直後にズレが出るのは、
「想定外」ではなく「想定内」です。
むしろ、最初からズレが一切出ない方が危険です。
なぜならそれは、
- まだ触られていない
- 入力されていない
- 本当の運用が始まっていない
可能性が高いからです。
H3-2|ズレ=失敗だと思ってしまう理由
それでも、多くの人が
「ズレ=失敗」と感じてしまいます。
その背景には、
Excel在庫管理時代の感覚があります。
Excelでは、
- 数字が合わない
- 原因が分からない
- 誰が直すかも分からない
という状態が、
そのまま「大トラブル」に直結していました。
だから、
「合わない=すぐ直さなきゃ」
「最初が肝心」
「ここで崩れたら終わり」
という思考が、
無意識のうちに染みついているのです。
さらに導入初期は、
- 正しく使えているか不安
- 失敗したくない
- 早く“正解”に近づきたい
という心理が強くなります。
その結果、
本来は観察すべきズレを、失敗と勘違いしてしまうのです。
H3-3|ズレが出た=データが集まり始めたサイン
ここで、見方を変えてみてください。
ズレが出ているということは、
- 入出庫が入力されている
- 実際の動きが記録されている
- 人がシステムを使っている
という状態です。
つまりそれは、
データが集まり始めたサインでもあります。
在庫管理システムは、
「最初から正解を出す道具」ではありません。
使われることで、現場のクセが見えてくる道具です。
ズレは、
- どこで迷ったのか
- どこが曖昧なのか
- どこにルールが足りないのか
を教えてくれる、
とても貴重な情報です。
👉 ここで大切な考え方
- ズレてOK
- 怖がらなくていい
- 今は直さなくていい
ズレは「失敗」ではなく、
次に整えるための材料が出そろい始めた合図です。
この段階では、
直すよりも、止めないこと。
責めるよりも、観察すること。
それが、第2回で一番伝えたいメッセージです。
H2-2|ズレ始めたときに「やっていいこと」
H3-1|ズレを“観察”する
- どこで起きているか
- 誰の操作で起きやすいか
H3-2|ズレの種類を分けて考える
- 数量のズレ
- 操作のズレ
- ルール未定義によるズレ
H3-3|「直さずメモする」という選択
- 今は修正フェーズではない
- 判断材料を貯める期間
H2-2|ズレ始めたときに「やっていいこと」
ズレが見え始めると、
多くの現場で次の衝動が生まれます。
- すぐ直したくなる
- 正解を決めたくなる
- ルールを固めたくなる
ですが、第2回でお伝えした通り、
今は“直すフェーズ”ではありません。
この段階でやっていいことは、
たった一つに集約されます。
ズレを材料として集めること
H3-1|ズレを“観察”する
まずやるべきことは、とてもシンプルです。
ズレを「問題」として見るのをやめて、観察対象として見ること。
具体的には、次の2点だけを見てください。
- どこで起きているか
- 入庫時なのか
- 出庫時なのか
- 棚移動や調整時なのか
- 誰の操作で起きやすいか
- 特定の担当者か
- 忙しい時間帯か
- 新しく触り始めた人か
ここで大切なのは、
良い・悪いを判断しないことです。
「誰が悪いか」ではなく、
「どんな状況で起きているか」だけを見ます。
ズレは、
人ではなく流れの中で起きているものだからです。
H3-2|ズレの種類を分けて考える
次にやっていいことは、
ズレを一括りにしないことです。
在庫のズレには、
実は性質の違うものが混ざっています。
代表的なのは、次の3種類です。
- 数量のズレ
- 実棚と数値が合わない
- 入力漏れ・二重入力
- 操作のズレ
- 入庫と出庫の判断が人によって違う
- 「いつ入力するか」が揃っていない
- ルール未定義によるズレ
- そもそも決まっていない
- 判断基準が共有されていない
この段階で重要なのは、
「どれが一番多いか」を見ることです。
全部を同時に直そうとしない。
まずは、ズレの正体を分解する。
それだけで十分です。
H3-3|「直さずメモする」という選択
ここで、多くの人が戸惑います。
「じゃあ、何もしないで放置するの?」
答えは、放置ではありません。
**「直さずに、メモする」**という行動を取ります。
- どんなズレが出たか
- いつ起きたか
- どんな状況だったか
紙でも、メモ帳でも、
Slackでも、Excelでも構いません。
大事なのは、
今は“修正”ではなく“判断材料集め”の期間だと理解すること。
このメモが、
後の回で行う
- SKUの粒度調整
- 棚番の見直し
- ルールを1本決める判断
の根拠になります。
今、無理に直してしまうと、
なぜズレたのかが分からないまま、形だけ整えてしまうことになります。
ズレ始めたときにやっていいことは、
- 観察する
- 分類する
- メモする
それだけです。
焦らなくていい。
正解を出さなくていい。
今は「判断しない準備」をしている最中なのです。
H2-3|ズレ始めたときに「やってはいけないこと」
H3-1|その場しのぎでExcelに戻る
- 一度戻ると戻れなくなる理由
- 現場が二重管理で疲弊する
H3-2|ズレをゼロにしようとする
- 精度100%を目指す危険性
- “止まるシステム”が生まれる瞬間
H3-3|原因が分からないままルールを増やす
- ルール過多=運用停止
- 判断が増えるほど入力されなくなる
H2-3|ズレ始めたときに「やってはいけないこと」
ズレが見え始めた瞬間、
現場では“よかれと思って”次の行動が取られがちです。
- いったんExcelに戻す
- ズレをゼロにしようとする
- ルールを追加して抑え込もうとする
どれも気持ちは分かります。
ですが、この3つは在庫管理システムを止める典型パターンです。
H3-1|その場しのぎでExcelに戻る
ズレが出た瞬間、
一番多い判断がこれです。
「一度Excelに戻して整理しよう」
一見、冷静で正しい判断に見えます。
ですが、**これは“戻れなくなる一歩目”**です。
一度戻ると戻れなくなる理由
Excelに戻すと、次の状態が生まれます。
- システム側の数値
- Excel側の数値
どちらが正か分からない状態が発生します。
すると現場では、
- 「とりあえずExcelを見よう」
- 「システムは後で直そう」
という空気が広がります。
結果、
システムは“参考資料”に格下げされます。
現場が二重管理で疲弊する
Excelに戻した瞬間から、
- 入力が二度手間になる
- どちらに入れたか分からなくなる
- 結局どちらも信用されなくなる
という二重管理地獄が始まります。
この状態になると、
ズレは減るどころか、確実に増えます。
Excelに戻ることは、
ズレを直す行為ではなく、
ズレを増やす仕組みを作る行為です。
H3-2|ズレをゼロにしようとする
次にやってはいけないのが、
精度100%を目指すことです。
精度100%を目指す危険性
導入初期に精度を追い始めると、
- 入力の確認が増える
- チェック工程が増える
- 判断が増える
結果、
入力スピードが落ちます。
すると現場では、
「忙しいから後で入力しよう」
が始まります。
これが、
ズレが固定化する瞬間です。
“止まるシステム”が生まれる瞬間
在庫管理で一番まずいのは、
数値がズレることではありません。
一番まずいのは、
「入力されなくなること」
です。
精度を上げようとした結果、
- 入力が重くなる
- 面倒になる
- 誰も触らなくなる
この状態になったシステムは、
正確でも、役に立ちません。
H3-3|原因が分からないままルールを増やす
ズレが出ると、
次に起きがちなのがこの判断です。
「ルールを決めて縛ろう」
ですが、原因が分からないままのルール追加は、
ほぼ確実に逆効果になります。
ルール過多=運用停止
ルールが増えると、
- 判断ポイントが増える
- 迷う時間が増える
- 間違える恐怖が増える
現場では次第に、
「よく分からないから、触らない」
という選択が増えていきます。
判断が増えるほど入力されなくなる
在庫管理は、
判断の少なさ=続きやすさです。
ルールを増やすほど、
- 入力は減る
- 情報は古くなる
- ズレは拡大する
という悪循環に入ります。
ルールは、
ズレを観察した“後”に、1本ずつ決めるもの。
原因が見えない段階でのルール追加は、
システムを守るどころか、殺してしまう行為です。
ズレ始めたときに、
やってはいけないことは次の3つです。
- Excelに戻らない
- ズレをゼロにしようとしない
- 原因不明のルールを増やさない
ズレは、
直すものではなく、読むもの。
次の回では、
このズレを使って
SKU・棚番を「1段だけ」整える方法に進みます。
H2-4|この段階で大事なのは「止めない判断」
H3-1|多少ズレていても進めていい理由
- 正確さより継続
- 修正は後からでも間に合う
H3-2|止まらない状態のチェックポイント
- 入力が続いている
- 触る人が減っていない
- 「もう嫌だ」が出ていない
H2-4|この段階で大事なのは「止めない判断」
導入後、ズレが見え始めたこの段階で
一番大事なのは正しい判断ではありません。
大事なのは、
止めない判断です。
H3-1|多少ズレていても進めていい理由
在庫管理システム導入の初期は、
「正確さ」を追うほど失敗します。
正確さより継続
この段階で優先すべきは、
- 在庫数が合っているか
ではなく - 入力が続いているか
です。
なぜなら、
- 入力が続けば、修正はできる
- 入力が止まれば、何も直せない
からです。
ズレがある状態でも、
- データが入り続けている
- 操作が積み重なっている
なら、
それは前に進んでいる状態です。
修正は後からでも間に合う
在庫管理の修正は、
- SKUの粒度
- 棚番の並び
- 入出庫の基準点
どれも後から調整できます。
逆に、
- 入力が止まった
- 現場が嫌になった
この状態は、
後から立て直すのが一番大変です。
だからこの段階では、
「多少ズレているけど、進んでいる」
この状態を
良い状態として受け入れる判断が必要です。
H3-2|止まらない状態のチェックポイント
「止まっていないかどうか」は、
次の3つで判断できます。
入力が続いている
- 完璧でなくても
- 間違いがあっても
触られているかが重要です。
入力が続いている限り、
システムは生きています。
触る人が減っていない
- 特定の人しか触らなくなっていないか
- 「あの人に任せよう」が増えていないか
触る人が減るのは、
運用が重くなり始めたサインです。
「もう嫌だ」が出ていない
これは一番重要です。
- 面倒くさい
- よく分からない
- 怒られそう
こうした空気が出ていないなら、
まだ止まっていません。
ズレがあっても、
この3つが守られていればOKです。
H2-5|ズレは「整える順番」を教えてくれる
H3-1|ズレが多い場所=次に触る場所
- SKUか
- 棚番か
- 入出庫ルールか
H3-2|全部直さない、1か所だけでいい
- 次回につながる布石
- 第3回への自然な導線
H2-5|ズレは「整える順番」を教えてくれる
ズレが出ると、
つい「全部直さなきゃ」と思ってしまいます。
でも実は、ズレは
全部を直すためのサインではありません。
ズレは、
次にどこを触ればいいかを教えてくれるサインです。
H3-1|ズレが多い場所=次に触る場所
ズレが集中している場所には、
必ず理由があります。
それは多くの場合、次の3つのどれかです。
SKUか
- 数え方の粒度が合っていない
- 人によって「同じ商品」の認識が違う
SKUが曖昧だと、
入力するたびに判断が発生します。
判断が増えるほど、ズレは起きます。
棚番か
- 似た場所が多い
- 並びが直感的でない
- 現場の動線と合っていない
棚番が分かりにくいと、
実棚とデータの距離が広がります。
入出庫ルールか
- いつを「入庫」とするか
- いつを「出庫」とするか
- 一時置きの扱いが決まっていない
ルールが決まっていないところは、
人によって判断が分かれます。
その結果、ズレが生まれます。
H3-2|全部直さない、1か所だけでいい
ここで大事なのは、
全部を整えようとしないことです。
ズレが見えたからといって、
- SKU
- 棚番
- ルール
を一気に触ると、
現場はまた止まります。
直すのは「一番ズレが多い1か所」だけ
- SKUが原因なら、SKUを1段だけ
- 棚番が原因なら、並びを少しだけ
- ルールが原因なら、基準点を1つだけ
それで十分です。
1か所整うと、
他のズレも自然と減り始めます。
ここまで読んだ方へ|在庫管理の「次の一歩」のご案内
ここまで読んでいただき、ありがとうございます
この講座では、「完璧を目指さない在庫管理」、 「現場を疲弊させない導入」、 「止まらない仕組みづくり」 を一貫してお伝えしてきました。
この講座の考え方は、アピス在庫管理システムの思想そのものです
実はこの講座でお話ししてきた考え方は、すべて 「アピス在庫管理システム」という小規模事業者向けの在庫管理システムを設計する中で生まれたものです。
- SKUや棚番を完璧に決めなくても始められる
- Excelからの段階導入を前提にできる
- 全数棚卸を強制しない(理想の一つとして扱う)
- ルールを重くせず、止まらない運用を優先する
その代わり、「小さな会社が、失敗せずに始められる」ことに本気で振り切っています。
ここまで読んで「うちも何とかしたい」と思った方へ
- 売り込みはしません(合わない場合は「やめた方がいい」とお伝えします)
- 今のやり方(Excel運用など)を否定しません
- 「導入するか迷っている」段階でも大丈夫です









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