在庫管理システム導入を失敗させないための実践講座【第1回】|最初の30日でやるべきこと 導入直後に 何もしない準備
在庫管理システムを入れた直後、
多くの現場でまず起きるのは「安心」ではなく、不安です。
- 本当にこのやり方で合っているのか
- 入力ミスをしたら取り返しがつかないのではないか
- 早くルールを決めないと、現場が混乱するのではないか
こうした不安は、特別なものではありません。
むしろ、まじめに導入を考えている現場ほど強く感じるものです。
システムを入れた直後が、いちばん不安になる理由
在庫管理システムは、
「入れた瞬間から完璧に動くもの」ではありません。
それでも導入直後は、
- 何かを決めないといけない気がする
- 早く整えないと失敗する気がする
- 最初が肝心だと思ってしまう
こうしたプレッシャーが一気に押し寄せます。
しかし実際には、
**このタイミングで一番多い失敗は「やりすぎること」**です。
「早く整えなきゃ」が一番危険
導入直後に、
- ルールを完璧に決めようとする
- 全体像を一気に固めようとする
- 正しい運用を完成させようとする
こうした動きが始まると、
現場は一気に疲れてしまいます。
結果として、
- 入力が止まる
- システムから距離を置かれる
- 「やっぱり合わなかった」という空気が生まれる
──これが、よくある失敗パターンです。
この第1回では「やらない準備」を扱います
この講座・第1回でお伝えしたいのは、
「最初に何をするか」ではありません。
むしろ、
- 最初の30日で
- 特に最初の1週間で
**「何をやらなくていいのか」**を整理することです。
在庫管理は、
完璧に始めた会社が成功するわけではありません。
止まらずに続けられた会社が、結果的にうまくいく。
そのために必要な
「導入直後に何もしない準備」を、
この第1回では一つずつ解きほぐしていきます。
H2-1|導入直後に起きる「3つの不安」は自然なもの
H3-1|現場が止まるのではないか、という不安
- 入力ミスが怖い
- 今まで通り動けなくなる恐怖
H3-2|在庫がズレたら取り返しがつかないのでは、という不安
- 「最初が肝心」という思い込み
- ズレ=失敗だと感じてしまう理由
H3-3|ルールを決めきれないまま進んでしまう不安
- 正解が分からない状態で決める怖さ
- 決めないと進めない気がしてしまう心理
👉 ここで「不安の言語化」+責めない宣言
H2-1|導入直後に起きる「3つの不安」は自然なもの
在庫管理システムを導入した直後、多くの現場で起きるのは
トラブルではなく、不安です。
実はこの不安は、
- システム選定を間違えたから
- 現場の理解が足りないから
- 担当者の能力が低いから
起きているわけではありません。
在庫管理システムを入れた直後なら、誰でも感じるものです。
まずは、よくある3つの不安を言葉にして整理します。
H3-1|現場が止まるのではないか、という不安
一番最初に出てくるのが、この不安です。
- 入力を間違えたらどうしよう
- 数字を壊してしまったら取り返しがつかないのでは
- 今まで通り動けなくなったら困る
こうした気持ちは、とても自然です。
なぜなら、
在庫管理システムは「便利そう」に見える一方で、
触った瞬間に現場の動きを変えてしまいそうに感じるからです。
特に、
今までExcelや紙で回してきた現場ほど、
「今は遅くても、なんとか回っている」
「これを壊すくらいなら、触らない方が安全では?」
という心理が働きます。
これは抵抗ではなく、防衛反応です。
現場が自分たちの仕事を守ろうとしているだけなのです。
H3-2|在庫がズレたら取り返しがつかないのでは、という不安
次に出てくるのが、在庫数に対する不安です。
- 最初の数字を間違えたら終わりでは?
- 一度ズレたら、もう信用できなくなるのでは?
- 「最初が肝心」と聞くけど、ちゃんとできていない気がする
この不安の正体は、
「最初から正しくなければいけない」という思い込みです。
たしかに、理想を言えば最初から正確な方がいい。
でも現実の現場では、
- 入出庫のタイミングが人によって違う
- 棚番やSKUの解釈がまだ揃っていない
- 操作に慣れていない
この状態で、完璧な数字が出る方が不自然です。
それでもズレが見えると、
「もう失敗しているのでは?」
「このまま使って大丈夫なのか?」
と感じてしまう。
ですが、ズレが見えるのは、失敗ではありません。
むしろ、今まで見えなかったものが見え始めただけです。
H3-3|ルールを決めきれないまま進んでしまう不安
3つ目の不安は、少し言語化しづらいものです。
- このまま進めていいのか分からない
- ルールを決めないとダメな気がする
- でも、何が正解か分からない
多くの担当者が、
「ちゃんと決めてから始めないといけない」
「中途半端な状態で触るのは危険」
と感じています。
これは真面目さゆえの不安です。
ただ、在庫管理において
最初から“正しいルール”を決められるケースはほとんどありません。
- 実際に動かしてみないと分からないこと
- 人によって詰まるポイント
- 思っていたより重要だった判断
これらは、使い始めてからしか見えてこないからです。
それでも「決めないと進めない」と感じてしまうのは、
「間違えたくない」「責任を負いたくない」という
ごく自然な心理です。
👉 不安の言語化と、責めない宣言
ここまで読んで、
- 「これ、全部自分のことだ」
- 「うちの現場まさにこれだ」
と感じたなら、安心してください。
その感覚は正常です。
在庫管理システム導入直後に不安が出るのは、
失敗の兆候ではありません。
むしろ、現場がちゃんと考えている証拠です。
この講座では、
- 不安がある状態を「ダメ」としません
- 迷っていることを責めません
- 完璧な判断を求めません
まずはこの前提だけ、覚えておいてください。
今は、決めなくていい。
今は、直さなくていい。
今は、止めなければいい。
H2-2|最初の7日間は「慣れる」だけでいい
H3-1|この期間にやっていいこと
- 画面を見る
- 触ってみる
- 入力してみる(間違ってOK)
H3-2|この期間にやらなくていいこと
- 精度100%を目指す
- 正しい運用を完成させる
- ルールを固める
H2-2|最初の7日間は「慣れる」だけでいい
導入直後の7日間は、
在庫を正しくする期間ではありません。
この期間の目的は、たった一つです。
「触っても壊れない」という感覚を、現場が掴むこと
それだけで十分です。
H3-1|この期間にやっていいこと
最初の7日間に「やっていいこと」は、とてもシンプルです。
画面を見る
まずは、見るだけでOKです。
- どこに何が表示されているのか
- どの画面で在庫数が変わるのか
- どんな項目があるのか
理解しようとしなくて構いません。
「ふーん、こんな感じなんだ」くらいで十分です。
触ってみる
次に、実際に触ってみます。
- メニューを開いてみる
- 戻る・進むを試してみる
- 「これ押したらどうなるんだろう?」を試す
この時点では、
業務を回そうとしなくていいです。
触る目的は、操作を覚えることではなく、
「触っても大丈夫そうだな」という感覚を持つことです。
入力してみる(間違ってOK)
そして、一番大事なのがこれです。
- 入庫を入れてみる
- 出庫を入れてみる
- 数字を間違えても気にしない
最初の入力は、練習でOKです。
むしろ、
- どこで間違えやすいか
- どの入力が迷うか
を知るために、
一度は必ず間違えた方がいいくらいです。
この時点での入力は、
「正しく残すため」ではなく
「迷うポイントを見つけるため」のものです。
H3-2|この期間にやらなくていいこと
逆に、最初の7日間にやらなくていいことも、はっきりさせておきます。
精度100%を目指す
この期間に
「在庫数をピッタリ合わせよう」とする必要はありません。
- ズレてOK
- 合わなくてOK
- 「なんとなく違う」でもOK
精度を追い始めると、
一気にプレッシャーがかかり、
触ること自体が怖くなります。
今は、正確さより継続です。
正しい運用を完成させる
- 正しい入出庫フロー
- 例外処理の決まり
- 承認ルール
こうした「正しそうな運用」を
この段階で完成させる必要はありません。
なぜなら、
実際に回していない状態で作った運用は、ほぼ必ずズレるからです。
完成させようとしなくて大丈夫です。
未完成のままで、問題ありません。
ルールを固める
「ここは決めておかないとダメですよね?」
と聞かれることがよくあります。
ですが、最初の7日間で
固めなければならないルールは、ありません。
- 人によって判断が違ってもいい
- その場で相談して決めてもいい
- 迷ったら止めてもいい
むしろ、
この時期にルールを固めると、
あとで「なぜこう決めたんだっけ?」となりがちです。
小さなまとめ(この章の結論)
最初の7日間は、
- 正しくやらなくていい
- 迷っていい
- 間違えていい
「慣れる」だけで合格です。
在庫管理システムは、
入れた瞬間に完成させるものではありません。
H2-3|最初の1週間で“絶対にやらなくていい作業”
H3-1|全数棚卸し
- なぜ今やると崩れるのか
- 基準点は「後で」作れる
H3-2|例外ルールの作り込み
- 例外はこの時点では無限に出る
- 今決めるほど混乱する
H3-3|運用フローの完成
- 完成させようとすると現場が止まる
- フローは「後から見えてくる」
H2-3|最初の1週間で“絶対にやらなくていい作業”
導入直後、現場や担当者が不安になると、
多くの場合「ちゃんとやらなきゃ」という方向に力が入ります。
ですが――
最初の1週間にやると、むしろ失敗しやすい作業が存在します。
ここでは、
「今は絶対にやらなくていいこと」をはっきりさせます。
H3-1|全数棚卸し
なぜ今やると崩れるのか
導入直後に、
「まずは在庫を全部数えて、きれいな状態から始めよう」
と考える方は多いです。
一見、正しそうに見えます。
しかし、このタイミングでの全数棚卸しは、ほぼ確実に崩れます。
理由はシンプルです。
- 操作に慣れていない
- 入出庫ルールが固まっていない
- 現場の動きもまだ安定していない
この状態で全数棚卸しをしても、
翌日からズレ始めるのがほとんどです。
すると、
- 「せっかく棚卸したのに…」
- 「もうズレてる…」
- 「やっぱり無理じゃないか…」
という空気が一気に広がります。
基準点は「後で」作れる
棚卸しは、
**“基準点を作るための作業”**です。
そして、基準点は
- システムに慣れて
- 現場の流れが見えて
- どこがズレやすいか分かってから
作った方が、
はるかに意味のあるものになります。
今は、
「ズレる前提」で動きを見る期間。
基準点は、後で必ず作れます。
焦って今やる必要はありません。
H3-2|例外ルールの作り込み
例外はこの時点では無限に出る
導入直後は、必ずこうなります。
- 「これは通常と違うんですが…」
- 「こういうケースはどうします?」
- 「イレギュラーなんですが…」
この時期に見える例外は、
**ほぼすべて“仮の例外”**です。
なぜなら、
- そもそも通常運用が定まっていない
- 操作ミスが例外に見えている
- 判断基準が人によって違う
からです。
今決めるほど混乱する
この段階で例外ルールを作り込むと、
- ルールが増えすぎる
- 誰も覚えられない
- 「どれ使うんだっけ?」となる
結果、
ルールがあるのに守られない状態になります。
例外は、
- 何度も出てくる
- 何人もが同じところで迷う
ようになってからで十分です。
今は、
「例外が出る」という事実を
メモしておくだけでOKです。
H3-3|運用フローの完成
完成させようとすると現場が止まる
導入直後にありがちなのが、
- 完璧なフロー図を作ろうとする
- 正しい手順を文章化しようとする
- 例外まで含めて整理しようとする
という動きです。
ですが、
完成した運用フローを最初から作れる現場は、ほぼ存在しません。
なぜなら、
まだ「実際にどう回るか」を
誰も体感していないからです。
フローは「後から見えてくる」
運用フローは、
- 実際に回してみて
- 詰まる場所が分かって
- 迷うポイントが見えて
初めて形になります。
つまり、
フローは設計するものではなく、浮かび上がってくるものです。
最初の1週間は、
- 人によってやり方が違ってもいい
- 少し遠回りでもいい
- 相談しながら進めていい
この「バラつき」こそが、
後のフロー設計の材料になります。
この章のまとめ
最初の1週間で、
- 全数棚卸しをしない
- 例外ルールを作り込まない
- 運用フローを完成させない
これはサボりではありません。
むしろ、
在庫管理を失敗させないための、正しい我慢です。
H2-4|この時期のゴールは「回す」ではなく「止めない」
H3-1|“回っていない”状態でOKな理由
- まだ評価するフェーズではない
- 判断材料を集めている段階
H3-2|止まらないことが、最大の成功
- 入力が続いている
- 触る人が減っていない
- 嫌になっていない
H2-4|この時期のゴールは「回す」ではなく「止めない」
導入直後というと、
つい「ちゃんと回っているか?」を気にしてしまいます。
ですが、第1回・最初のフェーズで見るべきゴールは
「回っているか」ではありません。
この時期のゴールは、ただ一つ。
止まらないこと。
H3-1|“回っていない”状態でOKな理由
まだ評価するフェーズではない
導入して数日〜1週間の段階で、
- 在庫数が合っているか
- ルールが正しいか
- 効率が上がっているか
こうした評価をするのは、
正直、早すぎます。
この段階で見えている数字や違和感は、
- 操作に慣れていない影響
- 判断基準が揃っていない影響
- 今まで見えていなかったズレが表面化しただけ
というケースがほとんどです。
つまり、
評価するための材料が、まだ揃っていない段階なのです。
判断材料を集めている段階
今やっていることは、
- 正解を出すこと
- 仕組みを完成させること
ではありません。
- どこで迷うのか
- どこで止まるのか
- 誰が不安を感じるのか
こうした判断材料を集めている段階です。
この材料が集まっていない状態で
「良い・悪い」を決めてしまうと、
ほぼ確実に判断を誤ります。
H3-2|止まらないことが、最大の成功
この時期の成功は、
数字でも完成度でもありません。
次の3つが守れていれば、
**それだけで十分“成功”**です。
入力が続いている
完璧でなくてもいいので、
- 誰かが入力している
- 記録が途切れていない
これが続いていればOKです。
多少ズレていても、
入力が止まらなければ、後から必ず修正できます。
触る人が減っていない
導入直後に一番怖いのは、
- 「面倒だからやめた」
- 「よく分からないから触らない」
- 「一部の人だけが使う状態になる」
ことです。
逆に言えば、
- 多少不安があっても
- 多少分からなくても
触り続けている人がいるなら、
システムはまだ生きています。
嫌になっていない
意外と見落とされがちですが、
これはとても重要です。
- 怒られていない
- 責められていない
- 「失敗した」と言われていない
この状態が保たれているなら、
導入は順調です。
在庫管理は、
嫌になった瞬間に終わります。
逆に言えば、
嫌になっていなければ、まだいくらでも立て直せます。
この章のまとめ
最初の1週間で目指すのは、
- 正しく回すこと
- 完成させること
- 成果を出すこと
ではありません。
止めないこと。
- 入力が続く
- 触る人が残る
- 嫌にならない
これが守れていれば、
在庫管理導入は、ちゃんと前に進んでいます。
H2-5|「何もしない準備」が、後の30日を決める
- 焦らないことで見えるもの
- 無理に整えないから、次に進める
- 第2週から起きることの予告
H2-5|「何もしない準備」が、後の30日を決める
在庫管理システムを導入すると、
どうしても「何かしなければ」と焦ってしまいます。
- 早く整えないといけない
- 今のうちに正解を作らないといけない
- 失敗したら取り返しがつかない
そんな気持ちになるのは、とても自然なことです。
ですが、ここまで読んでいただいた方には
あえて、逆のことをお伝えしたいと思います。
焦らないことで見えるもの
導入直後に焦らなかった場合、
次のようなことが少しずつ見えてきます。
- 本当に迷っているポイント
- 現場が引っかかっている場所
- ルールが必要な部分と、不要な部分
焦って整えようとすると、
これらはすべて見えないまま通り過ぎてしまいます。
「何もしない期間」をあえて作ることで、
**整えるべき“本当の場所”**が浮かび上がってきます。
無理に整えないから、次に進める
最初の1週間で、
- SKUを完璧に決める
- 棚番を最適化する
- ルールを完成させる
こうしたことをやろうとすると、
ほぼ確実に現場は止まります。
一方で、
- 触ってみる
- 入力してみる
- 迷ってみる
という「未完成な状態」を許しておくと、
次に何をすべきかが、自然と分かるようになります。
これはサボりでも逃げでもありません。
次に進むための、立派な準備です。
まとめ|導入直後に一番大切なのは「判断しない勇気」
在庫管理システムは、
入れた瞬間に完成するものではありません。
むしろ本当のスタートは、
「どう使うかを決めきらない期間」から始まります。
最初の1週間は、
- 正しく運用できていなくていい
- 在庫が合っていなくてもいい
- 不安を感じていてもいい
それは失敗ではなく、慣れている途中だからです。
この時期に一番大切なのは、
良し悪しを決めないこと、答えを急がないこと。
判断しない勇気を持てた現場ほど、
その後の在庫管理は、驚くほどスムーズに回り始めます。
次回は、
その「慣れ」の先で必ず起きる
ズレや違和感との正しい向き合い方を整理していきます。
「ズレたら失敗」ではありません。
そこからが、本当の導入フェーズです。
ここまで読んだ方へ|在庫管理の「次の一歩」のご案内
ここまで読んでいただき、ありがとうございます
この講座では、「完璧を目指さない在庫管理」、 「現場を疲弊させない導入」、 「止まらない仕組みづくり」 を一貫してお伝えしてきました。
この講座の考え方は、アピス在庫管理システムの思想そのものです
実はこの講座でお話ししてきた考え方は、すべて 「アピス在庫管理システム」という小規模事業者向けの在庫管理システムを設計する中で生まれたものです。
- SKUや棚番を完璧に決めなくても始められる
- Excelからの段階導入を前提にできる
- 全数棚卸を強制しない(理想の一つとして扱う)
- ルールを重くせず、止まらない運用を優先する
その代わり、「小さな会社が、失敗せずに始められる」ことに本気で振り切っています。
ここまで読んで「うちも何とかしたい」と思った方へ
- 売り込みはしません(合わない場合は「やめた方がいい」とお伝えします)
- 今のやり方(Excel運用など)を否定しません
- 「導入するか迷っている」段階でも大丈夫です









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