在庫管理システムを入れる前に知っておいてほしい
「やってはいけない順番」と「失敗しない進め方」
本講座では、
アピス在庫管理システムでの実際の導入経験をベースに、
中小規模の現場でも無理なく進められる考え方を整理しています。
H2-1|整理① SKU(在庫の数え方)を決める
在庫管理システムの導入で、最初に必ず整理しておくべきこと。
それが 「SKU(在庫の数え方)」 です。
SKUは、
「この商品を、在庫として何単位で数えるか」
を決める考え方です。
ここが曖昧なままシステムを入れてしまうと、
あとから 「なんだか在庫が合わない」「棚卸が信用できない」
という状態になりやすくなります。
システムの問題ではなく、
数え方のルールが決まっていないことが原因で起きるケースが非常に多いのです。
H3-1|SKUが曖昧なまま導入すると起きること
SKUを決めずに在庫管理を始めると、
現場では次のような問題が起きがちです。
在庫数が合わない
人によって
- 色違いを同じ商品として数える
- サイズ違いを別商品として数える
といった判断がバラバラになり、
理論在庫と実在庫が合わなくなります。
棚卸結果が信用されない
棚卸をしても
「本当に合っているのか分からない」
「前回との比較ができない」
という状態になり、
棚卸そのものが形骸化してしまいます。
ロット・使用期限が紐づかない
SKUが定義されていないと、
- どの商品に
- どのロット・使用期限が
- どれだけ残っているのか
が整理できず、
期限管理や先入先出が機能しません。
👉
これらはすべて
「システムを入れたのにうまくいかない」典型例です。
H3-2|JANコードとSKUを混同してはいけない理由
ここで、非常によくある勘違いがあります。
JANは「識別コード」
JANコードは、
- 商品を識別するためのコード
- レジ・発注・流通で使われる番号
です。
**JANは「番号」**であって、
在庫管理の単位そのものではありません。
SKUは「管理単位」
一方、SKUは
- 在庫をいくつとして数えるか
- 棚卸・入出庫の主語になる単位
です。
たとえば、
- 同じJANでも
- セット品
- バラ管理
でSKUを分けたいケースもあります。
現場で管理すべき主語はSKU
在庫管理で本当に大切なのは
「JANがいくつあるか」ではなく
「このSKUがいくつあるか」 です。
JAN=SKU と決めつけてしまうと、
後から運用を変えたいときに
身動きが取れなくなります。
H3-3|導入前に決めておくべきSKUの考え方
では、導入前に
どんな視点でSKUを決めておけばよいのか。
ポイントは次の3つです。
色・サイズ・仕様違いをどう扱うか
- 色違いは別SKUにするか
- サイズ違いはまとめるか分けるか
- 仕様違い(型番違い)はどうするか
「棚卸でどう数えたいか」 を基準に考えます。
SKUを増やしすぎない
細かく分けすぎると、
- 登録作業が増える
- 入力ミスが起きやすくなる
- 現場が嫌がる
という問題が出ます。
最初から完璧を目指さないことが重要です。
後から分けられる余地を残す
最初は大きめのSKUで始めて、
- 運用が安定してから
- 必要なものだけ細分化する
という進め方が、
小規模事業者では 失敗が少ない現実解です。
SKUは「一度決めると後が大変」
SKUは、
- 商品マスタ
- 棚卸履歴
- 在庫履歴
すべての土台になります。
だからこそ、
導入前に一度、立ち止まって考える価値があります。
この時点でしっかり整理しておけば、
在庫管理システムは
**「面倒なもの」ではなく「安心できる道具」**になります。
👉 次のパートでは、
「棚番・ロケーション管理をどこまでやるべきか」
を整理していきます。
「全部決めないとダメ?」
「小規模でも必要?」
そんな疑問を、次で解消します。
H2-2|整理② 棚番は“番号”ではなく“順番”で決める
在庫管理システム導入で、
SKUの次に必ず整理しておきたいのが 「棚番」 です。
ここで大事なのは、
棚番=管理番号 と考えないこと。
棚番は
「現場で棚卸・入出庫をするときの“動き方”」
を表すものです。
つまり、
棚番は“番号”ではなく“順番”で決めるものです。
H3-1|棚番が適当だと棚卸は必ず苦行になる
棚番をなんとなく決めてしまうと、
棚卸や日々の在庫確認は、必ず大変になります。
ジグザグ動線になる
棚番の順番と実際の配置がズレていると、
- あっちへ行って
- こっちへ戻って
- また元の棚へ
という ジグザグな動線 が生まれます。
これだけで、
棚卸の時間も体力も一気に奪われます。
抜け・重複が起きる
順番が整理されていないと、
- 数え忘れ
- 二重カウント
が発生しやすくなります。
結果として、
「棚卸をやったのに合わない」
という状態になります。
現場が疲弊する
棚卸が大変だと、
- 面倒だから省略する
- 急いで適当に数える
- ルールが守られなくなる
という悪循環に入ります。
👉
これはシステムの問題ではなく、
棚番設計の問題です。
H3-2|正しい棚番設計の考え方
では、棚番はどのように決めればよいのでしょうか。
考え方はとてもシンプルです。
人が歩く順=棚番の順
棚番は、
人が実際に歩く順番そのままに振ります。
- 入口からスタート
- 通路に沿って進む
- 行き止まりまで行く
この動線を、そのまま棚番にします。
上から下/手前から奥
棚単位でも順番を統一します。
- 上段 → 中段 → 下段
- 手前 → 奥
というように、
迷わず機械的に進めるルールを作ります。
全量棚卸との相性が良い
この考え方で棚番を振ると、
- 全量棚卸
- 定期棚卸
との相性が非常に良くなります。
「次はどこを数えるんだっけ?」
と迷うことがなくなり、
棚卸が“作業”になります。
H3-3|棚番は「先に現場で決める」
ここも非常に重要なポイントです。
システムに合わせない
棚番は、
システムの画面に合わせて決めるものではありません。
- 画面で入力しやすいから
- 初期設定が楽だから
という理由で決めると、
現場とのズレが必ず生まれます。
現場動線を最優先
まずやるべきことは、
- 倉庫・売場を実際に歩く
- どんな順番で数えるかを決める
- 紙やExcelで棚番を仮決めする
その後にシステムへ登録します。
順番を間違えると、
後から直すのは非常に大変です。
空き番・拡張を想定した振り方
棚番は、
最初からギチギチに振らないのがコツです。
- 途中に空き番を入れる
- 将来増えそうなエリアを想定する
こうしておくことで、
- レイアウト変更
- 商品増加
にも柔軟に対応できます。
棚番は「現場を楽にするための設計」
棚番を正しく設計すると、
- 棚卸が早くなる
- ミスが減る
- 現場の負担が減る
という効果が、確実に出ます。
逆に、
ここを曖昧にしたままシステムを入れると、
「在庫管理システムは大変」
という印象だけが残ってしまいます。
👉 次は、
「運用ルールを後回しにしてはいけない理由」 を整理します。
なぜ
「SKUと棚番を決めたのに、まだ失敗する会社があるのか」
その答えを、次で解説します。
H2-3|整理③ 運用ルールは“最低限”から始める
SKUと棚番を整理すると、
次に気になるのが 「運用ルールをどう決めるか」 です。
ここで多くの会社がやってしまうのが、
最初から完璧なルールを作ろうとすること。
実はこれが、
在庫管理システム導入で最も失敗しやすいポイントでもあります。
運用ルールは、
導入前に“最低限”を決めて、導入後に育てていくものです。
H3-1|ルールを決めすぎると必ず回らない
「せっかくシステムを入れるなら、
きちんとルールを作らなければ」
その考え方自体は間違っていません。
ただし、最初からやりすぎると必ず止まります。
完璧主義が最大の敵
- すべてのケースを想定する
- 例外処理まで細かく決める
- マニュアルを分厚くする
こうした状態になると、
誰もルールを覚えられません。
結果として、
- 「忙しいから後で」
- 「今回は省略でいいか」
という運用が始まり、
ルールが守られなくなります。
例外だらけになる
現場では必ず、
- 急な入荷
- イレギュラー出庫
- 人手不足
といった 想定外 が起きます。
ルールを細かく決めすぎるほど、
例外が増え、現場は混乱します。
👉
ルールが原因で
在庫管理が嫌われてしまうのです。
H3-2|導入前に決めるべき最小ルール
では、導入前に
最低限、何を決めておけばよいのか。
ポイントは、次の3つだけです。
誰が入力するか
まずは、
「在庫を動かした人が入力するのか」
「担当者がまとめて入力するのか」
を決めます。
全員入力にするのか、
担当制にするのか。
曖昧にしないことが重要です。
いつ入力するか
- 入出庫の都度
- 1日の終わり
- 棚卸後まとめて
など、
入力タイミングを一つに決めます。
「余裕があるとき」
というルールは、
ルールがないのと同じです。
例外時はどうするか
すべての例外を決める必要はありません。
ただし、
- 入力できなかったとき
- 数が合わなかったとき
どう報告するか・どこで止めるか
だけは決めておきます。
これだけで、
運用は十分に回り始めます。
H3-3|運用は導入後に“育てるもの”
運用ルールは、
導入した瞬間に完成するものではありません。
最初は粗くていい
最初から、
- 100点のルール
- 完璧なマニュアル
は必要ありません。
60点くらいでスタートする方が、
実際にはうまくいきます。
棚卸結果を見て調整する
棚卸をしてみると、
- どこでミスが起きたか
- どこが入力しづらいか
が、はっきり見えてきます。
そこを起点に、
- ルールを足す
- ルールを減らす
- やり方を変える
という調整を行います。
現場の声を前提にする
運用を続けるために一番大切なのは、
現場が無理なく続けられることです。
- 守れないルール
- 形だけの運用
は、長続きしません。
👉
現場の声を前提に、
少しずつ育てていくことが
在庫管理を定着させる近道です。
運用ルールは「縛るため」ではなく「続けるため」
運用ルールの目的は、
現場を縛ることではありません。
- 迷わないため
- 同じ判断をするため
- 安心して作業するため
にあります。
SKU・棚番・運用ルール。
この3つを 最低限の形で整えておくことで、
在庫管理システムは
無理なく、安心して使える道具になります。
👉 次回は、
「在庫管理システム導入で失敗する会社の共通点」
を整理します。
ここまで準備しても、
なぜ失敗してしまうのか。
その原因を、次で一度まとめて確認しましょう。
H2-4|この3つが整うと、システム導入が一気に楽になる
ここまでで整理してきた、
- SKU(在庫の数え方)
- 棚番(現場の動線)
- 運用ルール(最低限の決まり)
この3つが整っていると、
在庫管理システムの導入は 驚くほどスムーズ になります。
多くの人にとって、
この章を読んだ瞬間にこう感じてもらうのがゴールです。
👉 「あ、先に整理しておくと楽なんだ」
初期設定が迷わない
SKU・棚番・運用ルールが決まっていると、
システムの初期設定で 悩む時間が激減 します。
- 商品マスタをどう登録するか
- 棚番をどう入力するか
- 誰がどこまで操作するか
すべて、
すでに決めたルールを当てはめるだけ になります。
逆に、
ここが決まっていないと
設定画面を前にして止まってしまいます。
全量棚卸が回る
棚番が「順番」で設計されていると、
全量棚卸が 作業として成立 します。
- どこから始めて
- どこで終わるか
- 抜けや重複がないか
が明確になり、
棚卸が 苦行ではなくルーティン になります。
結果として、
- 棚卸の精度が上がる
- 在庫差異に早く気づける
という良い循環が生まれます。
ロット・使用期限管理が自然に使える
SKUが整理され、
棚番が正しく振られていると、
- ロット
- 使用期限
といった管理が
無理なく紐づいていきます。
特別な操作を増やさなくても、
- 「このSKUの中で」
- 「この棚にあるもの」
という形で
自然に管理ができるようになります。
「難しそう」「面倒そう」
という印象が出にくいのも、この状態です。
現場が拒否しない
在庫管理システム導入で
一番避けたいのは、
現場からの拒否反応 です。
- 入力が大変
- ルールが複雑
- 作業が増えた
こうした声は、
システムそのものよりも
導入前の整理不足 から生まれます。
先に整理ができていると、
- 作業の流れが変わらない
- 考えることが増えない
- 「やれば回る」実感が出る
ため、
現場が自然と受け入れてくれます。
システム導入が「作業」になる
この3つが整っている状態では、
在庫管理システムの導入は、
「大きな決断」ではなく
「順番に進める作業」
になります。
だからこそ、
- 焦らない
- 迷わない
- 失敗しにくい
という状態で進められます。
👉 次回は、
「それでも失敗してしまう会社の共通点」 を整理します。
ここまで準備しても、
なぜうまくいかないケースがあるのか。
やってはいけない落とし穴 を、
次で一度、はっきりさせましょう。
まとめ|システム導入は「設定作業」ではなく「準備の質」
在庫管理システムというと、
どうしても
- 画面設定
- 操作方法
- 機能の多さ
に意識が向きがちです。
しかし実際には、
在庫管理システムは万能ではありません。
どんなシステムでも、
- SKU(在庫の数え方)
- 棚番(現場の動線)
- 運用ルール(最低限の決まり)
この3つが整理されていなければ、
「使いづらい」「合わない」「続かない」
という結果になってしまいます。
逆に言えば、
この3つが事前に整っていれば、
在庫管理システムは 非常に強力な武器 になります。
- 初期設定で迷わない
- 棚卸が回る
- 在庫差異に早く気づける
- 現場が自然と受け入れる
こうした状態は、
高機能なシステムだから生まれるのではなく、
準備の質が高いから生まれるものです。
在庫管理システム導入は、
「設定作業」ではありません。
導入前の整理こそが、成功の9割を決める準備作業なのです。
参考|もう少し具体的に知りたい方へ
今回は、
在庫管理システム導入前に 必ず整理しておきたい考え方 を中心に解説しました。
「考え方は分かったので、
もう少し具体的なイメージも知りたい」
という方は、
以下の記事も 補足資料として 参考になります。
▶ SKUの基本をもう一度整理したい方
SKUとは?在庫と販売をつなぐ“最小単位”をやさしく解説
https://tecn.apice-tec.co.jp/what-is-sku-inventory51108/

→ SKUとは何か、
→ なぜ在庫管理の土台になるのかを
現場目線で整理しています。
▶ JANコードとSKUの違いで迷っている方
同じ商品なのにJANが違う?1SKUに複数JANを紐づける理由と仕組み
https://tecn.apice-tec.co.jp/why-sku-has-multiple-jan/

→ 「JAN=SKU」と思ってしまうと
→ なぜ運用が破綻しやすいのかを
実務ベースで解説しています。
▶ 棚番・現場動線をもう少し具体的に知りたい方
新人でも迷わない倉庫を作る|棚番・マップ化で教育コストを減らす方法
https://tecn.apice-tec.co.jp/warehouse-map-training/
→ 棚番を
→ 「番号」ではなく「順番」で考える理由を
現場の動きから説明しています。
※ いずれも 補足資料 です。
今すぐすべて読む必要はありません。
気になるところだけ拾い読みしてください。
次回予告|導入講座③
次回は、在庫管理システム導入でつまずく会社に共通する
「最初にやってはいけないこと」 を整理します。
👉 導入講座③|在庫管理システム導入で失敗する会社の共通点|最初にやってはいけないこと
「準備はしたつもりなのに、なぜか現場が回らない」
「システムを入れたのに、結局うまくいかない」
そんな失敗には、実はよくあるパターンがあります。
次回はそのパターンを“先回り”して潰しながら、特に混乱が起きやすい SKU設計 についても、判断に迷いやすいポイントを分かりやすく触れていきます。
- SKUはどこまで分けるべきか
- 分けすぎ・まとめすぎの判断基準
- ロット・使用期限管理とSKUの関係
「SKUは大事だと分かったけれど、結局どこまで分ければ正解なのか分からない」
そんな不安を、次回でいったん整理していきましょう。
次回で一つずつ整理していきます。
👤 筆者プロフィール|DXジュン(Apice Technology 代表)
「tecn」を運営している DXジュン です。
Apice Technology株式会社の代表として、20年以上にわたり
Web制作・業務改善DX・クラウドシステム開発に携わっています。
普段は企業の現場課題に寄り添いながら、
在庫管理システム/予約システム/求人管理/受発注システム/クラウドソーシング など、
中小企業の仕事を“ラクにするツール”を作っています。
tecn では、業務改善のリアルや、Webシステムの仕組み、 そして「技術が生活をちょっと楽しくしてくれる」ような 日常×デジタルのヒントをゆるく発信しています。
現在の注力テーマは 在庫管理のDX化。 SKU・JAN・棚卸・リアルタイム連携など、 現場で役立つ情報を発信しつつ、 自社のクラウド在庫管理システムも開発・提供しています。
🔗 Apice Technology(会社HP)
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