EOQ(経済的発注量)とは中小企業でも使える?現場で失敗しやすい注意点
経済的発注量(EOQ)は、
「在庫コストを最小化できる理論」として教科書や研修でよく紹介されます。
しかし実際の現場では、
- EOQを計算したのに在庫が減らない
- かえって欠品や過剰在庫が増えた
- 「理論通りにいかない」と使われなくなった
といった声も少なくありません。
特に中小企業では、
需要変動・小ロット制約・属人運用などの影響を受けやすく、
EOQをそのまま当てはめると失敗しやすいのが実情です。
本記事では、
EOQは中小企業でも使えるのか?
なぜ現場で失敗しやすいのか?
どう考えれば実務に活かせるのか?
を「理論」ではなく現場目線で整理します。
EOQを「使えない理論」で終わらせず、
在庫管理の設計判断に活かすための考え方を解説します。
H2-1|EOQ(経済的発注量)は本当に中小企業でも使えるのか
H3-1|「使える/使えない」で議論が分かれる理由
経済的発注量(EOQ)は、在庫管理の教科書や研修資料では
**「在庫コストを最小化する最適解」**として紹介されることが多い指標です。
そのため、
- EOQを計算すれば在庫は安定する
- 数式通りに発注すればムダが減る
といった印象を持たれがちです。
一方で、実際の中小企業の現場では、
- EOQを計算しても在庫が減らない
- 理屈は分かるが、現実には使えない
- 結局、経験と勘で発注している
といった声が多く聞かれます。
このギャップが、
「EOQは使える」「いや、使えない」
という議論が分かれる最大の理由です。
問題は、EOQそのものではありません。
多くの場合、EOQが成り立つ前提条件が共有されないまま使われていることにあります。
H3-2|結論:EOQは「そのまま使うもの」ではない
結論から言うと、
EOQは中小企業でも使えますが、そのまま使うものではありません。
中小企業の現場では、
- 需要が日々変動する
- 小ロット制約や仕入先事情がある
- 発注・保管コストを正確に数値化できない
といったケースが多く、
教科書通りのEOQ前提が成立しないことが珍しくありません。
そのため、EOQを
- 日々の発注指示
- 現場オペレーションのルール
として直接使おうとすると、
「理論倒れ」「机上の空論」と感じられやすくなります。
本来のEOQは、
発注量をどう考えるべきかを整理するための判断材料です。
運用ルールそのものではなく、
在庫管理全体を設計するための“基準点”として位置づけることで、
初めて現場で意味を持つ指標になります。
🔍 EOQを在庫管理全体でどう位置づけるか
EOQ(経済的発注量)は有効な考え方ですが、 それ単体で在庫管理が最適化できるわけではありません。
発注点や安全在庫、運用ルールまで含めて設計しなければ、 欠品や過剰在庫といった問題は繰り返されます。
EOQはあくまで「判断材料の1つ」であり、 在庫管理全体の考え方の中で位置づけて使うことが重要です。
H2-2|中小企業の現場でEOQが失敗しやすい理由
H3-1|需要が安定していない
EOQモデルは、
需要が一定であることを前提に成り立つ考え方です。
しかし中小企業の現場では、
- 季節要因による需要変動
- 突発的な受注・キャンセル
- 得意先都合による数量ブレ
といった変動が日常的に発生します。
さらに、
- 少量多品種
- 短納期対応
- 案件ごとの発注判断
が求められるケースも多く、
「一定需要」を前提としたEOQをそのまま当てはめること自体が難しくなります。
需要が安定していない状態でEOQを使うと、
- 計算上は最適でも実態とズレる
- 過剰在庫や欠品を招く
といった結果になりやすく、
EOQが役に立たないと感じられる原因になります。
H3-2|発注コスト・保管コストを正確に出せない
EOQは、
- 発注コスト
- 保管コスト
を数値化し、そのバランスから最適発注量を求める考え方です。
ところが中小企業では、
- 発注作業の人件費
- 間接業務の工数
- 倉庫スペースや管理負担
といったコストが明確に見えていないことが少なくありません。
結果として、
- 「だいたいこのくらいだろう」
- 「去年と同じ前提で計算する」
といったざっくりした数値でEOQを計算してしまい、
モデルの前提条件が崩れてしまいます。
この状態では、
EOQの計算結果がブレるのは当然で、
「計算しても意味がない」という印象につながります。
問題はEOQではなく、
前提となるコスト構造が整理されていないことにあります。
H3-3|小ロット制約・仕入先事情がある
EOQは理論上、
「最も効率的な発注量」を算出しますが、
現場ではその数量で発注できないケースも多くあります。
例えば、
- 最低発注数量が決まっている
- 仕入単位が固定されている
- 価格条件や納期が優先される
といった仕入先事情です。
このような制約があると、
- EOQで算出した数量が現実的でない
- 結局、仕入条件に合わせて発注する
という判断になり、
EOQは「使えない理論」として扱われがちです。
しかしここでも重要なのは、
EOQが間違っているのではなく、現場制約を考慮せずに使っていることです。
EOQは「答え」ではなく、
制約を踏まえた判断をするための基準点として使うべき指標だと言えます。
” 📌 在庫管理全体の視点で見ると
ここで解説した内容は、EOQという個別指標の話にとどまらず、 在庫管理全体の設計や考え方と深く関係しています。
H2-3|EOQをそのまま使うと起きやすい現場トラブル
H3-1|計算結果を鵜呑みにしてしまう
EOQを学ぶと、多くの現場で起きがちなのが
「計算結果=正解」だと思い込んでしまうことです。
教科書や解説記事では、
- EOQはコストを最小化する
- 最適な発注量が算出できる
と説明されるため、
算出された数値そのものに強い説得力を感じてしまいます。
しかし実際の現場では、
- 需要が徐々に変化している
- 仕入条件が変わる
- 運用ルールが固定化されていない
といった要因が常に存在します。
EOQを「一度計算したら終わり」にしてしまうと、
- 状況変化に気づくのが遅れる
- 発注量を見直す判断ができない
結果として、
計算上は正しいはずなのに、現場ではズレが広がるという事態が起こります。
EOQは答えではなく、
考え直すための出発点として使う必要があります。
H3-2|発注点・安全在庫と切り離して考えてしまう
もう一つ多いトラブルが、
EOQを「発注量だけの話」として切り離してしまうことです。
EOQは「どれくらい発注するか」を考える指標ですが、
- いつ発注するのか(発注点)
- どれくらい余裕を持つのか(安全在庫)
と組み合わせて初めて、在庫は安定します。
EOQだけを導入すると、
- 発注量は決まっている
- しかし発注タイミングが曖昧
という状態になりがちです。
その結果、
- 発注が遅れて欠品する
- 早めすぎて在庫が積み上がる
といった問題が繰り返されます。
これはEOQの欠陥ではなく、
在庫管理を部分最適で考えてしまっていることが原因です。
EOQは、
- 発注点
- 安全在庫
- リードタイム
- 運用ルール
とセットで位置づけてこそ、意味を持つ指標だと言えます。
📎 関連記事|EOQの前提を理解する
EOQを正しく使うためには、
計算式そのものよりも「前提条件」を理解することが重要です。
EOQの考え方や計算式をまだ整理していない場合は、
以下の記事で基礎を確認しておくと、
本記事の内容がより立体的に理解できます。

H2-4|それでもEOQを「使える考え方」にする方法
H3-1|EOQは「設計の基準点」として使う
EOQが中小企業の現場でうまく機能しない原因の多くは、
使い方を誤っていることにあります。
EOQは本来、
- 日々の発注指示を出すための数値
- 現場オペレーションを直接動かすルール
ではありません。
むしろEOQは、
- 発注量は「どのくらいが妥当か」
- 在庫を持ちすぎていないか
- 発注回数が多すぎないか
といったことを考えるための
**設計上の基準点(ものさし)**として使う指標です。
たとえば、
- 現在の発注量がEOQと大きくズレていないか
- なぜズレているのか(需要・制約・運用)
を確認することで、
在庫方針や発注ルールを見直すヒントが得られます。
EOQは「その通りに動かす数字」ではなく、
設計を考えるための出発点として扱うことが重要です。
H3-2|発注点方式・安全在庫と組み合わせる
EOQを現場で活かすためには、
必ず 他の在庫管理の考え方とセットで捉える必要があります。
役割を整理すると、次のようになります。
- EOQ:どれくらい発注するか(発注量)
- 発注点方式:いつ発注するか(タイミング)
- 安全在庫:不確実性をどう吸収するか(リスク対策)
この3つはそれぞれ役割が異なり、
どれか1つだけでは在庫は安定しません。
EOQだけを使うと、
- 発注量は決まるが、タイミングが曖昧
- 状況変化への対応が遅れる
発注点方式だけだと、
- タイミングは決まるが、量が場当たり的
安全在庫だけを厚くすると、
- 在庫過多になりやすい
といった問題が起こります。
EOQは、
発注点・安全在庫と組み合わせて初めて意味を持つ設計要素です。
在庫管理を「数字の計算」ではなく、
全体設計として捉える視点が欠かせません。
🔍 EOQは「答え」ではなく、在庫管理設計の一部です
EOQ(経済的発注量)は、発注量を考えるうえで有効な指標ですが、 それ単体で在庫管理が最適化できるわけではありません。
発注点・安全在庫・運用ルールまで含めて設計してはじめて、 欠品や過剰在庫を防ぐ在庫管理が成立します。
H2-5|中小企業がEOQを使うときの現実的な考え方
H3-1|「正確な数値」より「考え方の整理」を優先する
中小企業がEOQを導入するときに、最初にズレやすいのが
**「正確な数値を出さないと意味がない」**という思い込みです。
結論から言うと、EOQは
- 1円単位で正確に当てるもの
- “完璧な最適解”を出すもの
ではありません。
むしろ現場で価値が出るのは、EOQを使って
- 今の発注量は多すぎるのか/少なすぎるのか
- 発注回数が多すぎてムダが出ていないか
- 在庫を持ちすぎてキャッシュが寝ていないか
といった **方向性の判断(ものさし)**ができることです。
EOQは「正解を出す道具」ではなく、
判断基準を作る道具として使うのが現実的です。
そのため、最初から完璧な数値を求めるよりも、
- ざっくりでも同じルールで見積もる
- 同じ商品群で相対比較する
- 改善前後で変化を見る
という形で、比較できる状態を作ることを優先した方がうまくいきます。
H3-2|属人運用から仕組みへ視点を切り替える
EOQが「理論倒れ」になる最大の原因は、
計算が難しいことではなく、運用が属人化していることです。
たとえば、
- ベテラン担当者の勘で発注量が決まる
- 「とりあえず多め」が基本ルール
- 忙しいと発注判断が遅れる
- 欠品したら慌てて緊急発注する
こうした状態では、EOQを計算しても
現場の判断が変わらないため効果が出ません。
だからこそ、中小企業でEOQを活かすには、
- 発注量(EOQ)
- 発注タイミング(発注点)
- 欠品リスク吸収(安全在庫)
- 運用ルール(誰が・いつ・どう判断するか)
をセットで捉えて、「個人の判断」から「仕組みの設計」へ視点を上げる必要があります。
EOQはそのための入口であり、
「在庫管理全体を設計し直すきっかけ」として使うと、一気に現実的になります。
” 📌 在庫管理全体の視点で見ると
ここで解説した内容は、EOQという個別指標の話にとどまらず、 在庫管理全体の設計や考え方と深く関係しています。
H2-6|まとめ|EOQは魔法の答えではないが、無視すべき理論でもない
EOQ(経済的発注量)は、
中小企業では「難しい」「机上の空論」と見られがちですが、
それは EOQそのものが悪いのではなく、使い方が誤っている ケースがほとんどです。
EOQは、
- 在庫を自動的に最適化してくれる「魔法の答え」ではありません
- しかし、感覚や経験だけに頼る在庫管理よりも
はるかに合理的な判断軸を与えてくれる理論です
重要なのは、
EOQを 計算結果として使うのではなく、考え方として活かすこと です。
- 今の発注量は多すぎないか
- 発注回数を減らせないか
- 在庫を持ちすぎていないか
こうした問いを、数字を使って整理できる点に
EOQの本当の価値があります。
そして何より大切なのは、
EOQを 在庫管理全体の設計の中で位置づけること です。
発注点、安全在庫、運用ルールと切り離してしまえば、
EOQは意味を持ちません。
逆に、それらと組み合わせて考えれば、
中小企業でも十分に「使える理論」になります。
EOQは「答え」ではなく、在庫管理設計の一部です
EOQ(経済的発注量)は、発注量を考えるうえで有効な理論ですが、 それ単体で在庫管理がうまくいくわけではありません。
発注点や安全在庫、運用ルールまで含めて設計してはじめて、 欠品や過剰在庫を防ぐ在庫管理が成立します。
EOQはあくまで「判断材料の1つ」であり、 在庫管理全体の考え方の中で位置づけて使うことが重要です。
👤 筆者プロフィール|DXジュン(Apice Technology 代表)
「tecn」を運営している DXジュン です。
Apice Technology株式会社の代表として、20年以上にわたり
Web制作・業務改善DX・クラウドシステム開発に携わっています。
普段は企業の現場課題に寄り添いながら、
在庫管理システム/予約システム/求人管理/受発注システム/クラウドソーシング など、
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現在の注力テーマは 在庫管理のDX化。 SKU・JAN・棚卸・リアルタイム連携など、 現場で役立つ情報を発信しつつ、 自社のクラウド在庫管理システムも開発・提供しています。
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