EOQモデルとは?経済的発注量との違いと在庫管理での使い分け
EOQモデルと経済的発注量(EOQ)は、似た言葉として使われることが多く、
「何が違うのか分からない」「結局どちらを使えばいいのか迷う」
という声をよく聞きます。
特に在庫管理の現場では、
計算式だけを使ってしまい、
理論と実務のズレに悩むケースも少なくありません。
EOQモデルは、単なる計算式ではなく、
在庫管理を考えるための“前提条件を整理した考え方”です。
一方、経済的発注量(EOQ)は、
そのモデルから導かれる発注量の目安を指します。
本記事では、
EOQモデルと経済的発注量の違いを整理しながら、
在庫管理の現場でどのように使い分けるべきかを
実務目線でわかりやすく解説します。
H2-1|EOQモデルとは何か【理論上の位置づけ】
EOQモデルは、発注量を合理的に考えるための理論的な枠組みですが、
実際の在庫管理では、他の考え方やルールと組み合わせて設計する必要があります。
発注点・安全在庫・運用ルールまで含めて整理することで、
EOQモデルは初めて「現場で使える判断材料」になります。
在庫管理を属人化せず、仕組みとして整えたい場合は、
在庫管理システムによる改善も選択肢の一つです
。
H3|EOQモデルの基本的な考え方
EOQモデルとは、在庫管理において
「どのくらいの量を、どのタイミングで発注するのが合理的か」
を考えるための理論モデルです。
ここで重要なのは、EOQモデルが
実際の現場をそのまま再現したものではない
という点です。
EOQモデルは、次のような前提条件を置いたうえで考えられています。
- 需要量は一定である
- 発注は毎回同じ量で行われる
- 発注費用・保管費用は変動しない
- 欠品や数量割引は考慮しない
つまりEOQモデルは、
複雑な現実を一度シンプルに整理し、
在庫管理の基本構造を理解するための枠組み
として作られた考え方です。
このモデルの中で導き出されるのが、
「経済的発注量(EOQ)」という数値になります。
H3|なぜ「モデル」と呼ばれるのか
EOQモデルが「モデル」と呼ばれる理由は、
単に計算式があるからではありません。
EOQモデルは、
- 需要
- 発注
- 在庫
- コスト
といった要素を、
一定のルールと前提条件で整理した“考え方の型”
だからです。
経済的発注量(EOQ)は、
このモデルの中で
「発注コスト」と「保管コスト」が
最もバランスする点として算出されます。
しかし現実の在庫管理では、
- 需要が日々変動する
- 仕入先の制約がある
- 業務ルールや人の動きが影響する
といった事情が必ず存在します。
そのためEOQモデルは、
現実を完全に再現するためのものではなく、
在庫管理を考える“基準点”を与えるためのもの
と理解するのが適切です。
この前提を押さえておかないと、
EOQの計算結果を
「そのまま使える正解」と誤解してしまい、
実務とのズレが生じやすくなります。
H2-2|EOQ(経済的発注量)との違いを整理する
数式だけでは在庫管理は最適化できません
EOQの数値は、あくまでモデル上の結果です。
実際の在庫管理では、業務フロー・人の動き・例外処理まで含めた設計が欠かせません。
EOQを「使える知識」に変えるための全体設計については、こちらで整理しています。
在庫管理の考え方を体系的に理解する
H3|EOQは「結果」、EOQモデルは「考え方」
EOQ(経済的発注量)とEOQモデルは、
似た言葉ですが 役割はまったく異なります。
まず、両者の違いを整理すると次のようになります。
- EOQ(経済的発注量)
→ 計算によって導き出される「発注量の数値」 - EOQモデル
→ その数値を導くための「前提条件・考え方の枠組み」
つまり、
EOQは「答え」
EOQモデルは「その答えを出すための思考の土台」
という関係です。
EOQモデルでは、
需要・発注・在庫・コストといった要素を
一定の前提条件のもとで整理し、
その中で 最も合理的とされる発注量 を
EOQとして算出します。
この関係を理解せずに
EOQという数値だけを切り取ってしまうと、
在庫管理の判断を誤りやすくなります。
H3|計算式だけを使うと起きる誤解
EOQが数式で求められるため、
現場では次のような誤解が起きがちです。
- EOQ=最適な発注量
- この数字を使えば在庫は最適化される
- EOQは万能な正解である
しかし、これは 非常に危険な理解 です。
EOQの計算式は、
あくまで EOQモデルという前提構造の中でのみ成立 します。
たとえば、
- 需要が一定でない
- 発注ロットに制約がある
- 保管コストが品目ごとに異なる
- 人的運用や業務ルールが影響する
といった現実の条件を無視したまま
EOQの数値だけを使ってしまうと、
- 欠品が発生する
- 過剰在庫が減らない
- 現場運用と噛み合わない
といった問題が起こります。
EOQは「そのまま使う数字」ではなく、
在庫管理を考えるための判断材料の一つ
として位置づけることが重要です。
この違いを理解しておくことで、
EOQを 現実に合わせて調整・活用する視点 が生まれます。
H2-3|EOQモデルの前提条件と限界
数式だけでは在庫管理は最適化できません
EOQの数値は、あくまでモデル上の結果です。
実際の在庫管理では、業務フロー・人の動き・例外処理まで含めた設計が欠かせません。
EOQを「使える知識」に変えるための全体設計については、こちらで整理しています。
在庫管理の考え方を体系的に理解する
EOQモデルは、在庫管理を考えるうえで非常に有名な理論ですが、
すべての現場でそのまま使える万能な考え方ではありません。
この章では、
- EOQモデルが どのような前提条件のもとで成立するのか
- そして なぜ現場ではうまく当てはまらないケースが多いのか
を整理します。
H3|EOQモデルが成立する前提条件
EOQモデルは、在庫を数式で最適化するために、現実をかなり単純化しています。
具体的には、次のような前提条件が置かれています。
需要が安定している
EOQモデルでは、
「一定期間あたりの需要量が常に同じである」
という前提が置かれます。
需要の増減や季節変動、突発的な注文は考慮されておらず、
将来の需要が予測可能で安定している状態が想定されています。
発注費・保管費が一定
1回あたりの発注にかかるコスト(発注費)と、
在庫を持つことで発生するコスト(保管費)は、
数量や時期によらず一定として扱われます。
人件費や倉庫費用、管理工数の増減などは考慮されません。
欠品・数量割引を考慮しない
EOQモデルでは、
- 欠品は起こらない
- 大量発注による値引き(数量割引)は存在しない
という前提が置かれています。
あくまで
「発注費と保管費の合計を最小化する」
ことだけに焦点を当てたモデルです。
H3|現場でこの前提が崩れるケース
理論としては非常に美しいEOQモデルですが、
実際の在庫管理の現場では、これらの前提が崩れることの方が多いのが現実です。
需要変動が大きい
実務では、
- 売上の波がある
- 繁忙期・閑散期がある
- 突発的な注文が入る
といったケースが一般的です。
需要が安定していない状況では、
EOQで算出した発注量がすぐにズレてしまいます。
小ロット制約・仕入先事情
仕入先から、
- 最低発注数量が決まっている
- 発注単位が固定されている
- 納期が不安定
といった制約がある場合、
理論上のEOQどおりに発注すること自体が不可能なこともあります。
人的運用・属人ルール
在庫管理は、数式だけで完結するものではありません。
- 担当者ごとの判断
- 経験則による調整
- 「念のため多めに持つ」といった感覚的運用
こうした人的要素が入ることで、
EOQモデルの前提は簡単に崩れてしまいます。
EOQモデルは「間違った理論」ではありません。
ただし、前提条件を理解せずに使うと、かえって判断を誤る可能性があるという点が重要です。
🔗 関連記事|EOQの計算式をもう一度整理したい方へ
EOQモデルの前提を理解したうえで、
計算式そのものを正しく押さえたい方は、次の記事も参考にしてください。
- 経済的発注量(EOQ)の計算式を図解|覚え方と計算ミスを防ぐポイント
(※ ここに②の記事への関連記事リンクを配置)
H2-4|在庫管理の現場ではEOQモデルをどう使うべきか
EOQモデルは、在庫管理を考えるうえで有効な理論ですが、
それ単体で現場の在庫管理を最適化できるわけではありません。
発注点や安全在庫、運用ルールまで含めて設計してはじめて、
欠品や過剰在庫といった問題を防ぐことができます。
EOQは「判断材料の1つ」として、
在庫管理全体の考え方の中で位置づけて使うことが重要です。
EOQモデルは、在庫管理を考えるうえで有効な理論ですが、
現場でそのまま運用ルールとして使うものではありません。
重要なのは、
「EOQモデルをどのレベルの判断に使うのか」
を正しく理解することです。
H3|EOQモデルは「設計判断」に使う
EOQモデルが本来役立つのは、
日々の発注作業ではなく、
在庫管理の「設計段階」です。
日々の発注指示には向かない
現場では、
- 需要の変動
- 納期のズレ
- 人的判断
- 仕入先の制約
といった要素が常に発生します。
そのため、
「EOQで算出した数量を毎回そのまま発注する」
という運用は、現実的ではありません。
在庫方針を決めるための基準点
一方でEOQモデルは、
- 発注量が大きすぎないか
- 在庫を持ちすぎていないか
- 発注回数が多すぎないか
といった 在庫方針の妥当性を考えるための基準点として非常に有効です。
EOQは、
「このくらいが理論上のバランス点になる」
という 判断材料として使うのが正しい位置づけです。
H3|発注点・安全在庫と組み合わせる考え方
EOQモデル単体では、
在庫管理は成立しません。
EOQ単体では運用できない理由
EOQモデルは、
- いつ発注するか(発注点)
- どこまで余裕を持つか(安全在庫)
といった運用面をカバーしていません。
そのため、
- 発注点方式
- 安全在庫の考え方
- 実際の運用ルール
と組み合わせて初めて、
現場で使える在庫管理になります。
在庫管理設計の中での位置づけ
在庫管理の設計は、
- EOQ:発注量の目安
- 発注点:発注タイミング
- 安全在庫:リスク吸収
- 運用ルール:現場対応
といった要素を全体として組み立てるものです。
EOQモデルは、
この中の 1パーツに過ぎません。
H2-5|EOQモデルと他の在庫管理手法との関係
EOQモデルは、発注量を考えるうえで有効な理論ですが、
発注点方式や需要予測、安全在庫と役割が重なるものではありません。
在庫管理では、
「量・タイミング・リスク・運用」を分けて設計することが重要です。
EOQはあくまでその中の一要素として、
在庫管理全体の設計の中で位置づけて使う必要があります。
EOQモデルは、在庫管理の中でも
単独で完結する手法ではありません。
他の在庫管理手法と
「何を担当し、何を担当しないのか」
を整理して理解することが重要です。
H3|発注点方式との違い
EOQモデルと発注点方式は、
混同されやすいですが、役割がまったく異なります。
量を決める vs タイミングを決める
- EOQモデル
- 1回あたりの発注量を考えるための考え方
- 「どれくらいまとめて仕入れるのが妥当か」を示す
- 発注点方式
- いつ発注するかを決める仕組み
- 在庫残数やリードタイムを基準に判断する
つまり、
- EOQ=量の設計
- 発注点=タイミングの設計
という役割分担になります。
どちらか一方だけでは、
現場で安定した在庫管理はできません。
H3|需要予測・安全在庫との役割分担
EOQは予測そのものではない
EOQモデルは、
需要を予測する手法ではありません。
- 需要予測:
将来どれくらい売れるかを見積もる - EOQモデル:
その需要を前提に、
発注量のバランス点を考える
という関係です。
あくまで「前提設計」
EOQは、
- 需要予測
- 安全在庫
- 発注点
- 運用ルール
といった要素の
土台(前提)を考えるための理論です。
EOQだけで在庫管理が完結することはなく、
他の手法と組み合わせて初めて意味を持ちます。
H2-6|まとめ|EOQモデルは「答え」ではなく「考える枠組み」
EOQモデルは、発注量を考えるうえで有効な理論ですが、
それ単体で在庫管理が最適化されるわけではありません。
発注点、安全在庫、需要予測、運用ルールまで含めて設計してこそ、
EOQの考え方は現場で意味を持ちます。
EOQを「計算結果」としてではなく、
在庫管理全体を考えるための基準として捉えることが重要です。
EOQモデルは、
在庫管理の「正解」を出すための万能な計算式ではありません。
**発注量をどう考えるべきかを整理するための
“思考の枠組み”**です。
計算結果だけを見て
「この数量が最適解だ」と判断してしまうと、
- 需要変動
- 仕入条件
- 現場運用
- 属人ルール
といった現実要因とのズレが生まれ、
かえって在庫トラブルを招くことがあります。
重要なのは、
- なぜその数量になるのか
- どの前提が置かれているのか
- 現場ではどこを調整すべきか
を理解したうえで、
在庫管理全体の設計にどう組み込むかを考えることです。
EOQモデルは
「答え」ではなく
考えるための基準点として使うことで、
初めて価値を発揮します。
👤 筆者プロフィール|DXジュン(Apice Technology 代表)
「tecn」を運営している DXジュン です。
Apice Technology株式会社の代表として、20年以上にわたり
Web制作・業務改善DX・クラウドシステム開発に携わっています。
普段は企業の現場課題に寄り添いながら、
在庫管理システム/予約システム/求人管理/受発注システム/クラウドソーシング など、
中小企業の仕事を“ラクにするツール”を作っています。
tecn では、業務改善のリアルや、Webシステムの仕組み、 そして「技術が生活をちょっと楽しくしてくれる」ような 日常×デジタルのヒントをゆるく発信しています。
現在の注力テーマは 在庫管理のDX化。 SKU・JAN・棚卸・リアルタイム連携など、 現場で役立つ情報を発信しつつ、 自社のクラウド在庫管理システムも開発・提供しています。
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