バーコード 在庫管理 自作|Excel運用が破綻しやすい理由
Excelでバーコードを自作し、在庫管理を行っている現場は少なくありません。
最初は「読み取れる」「入力が楽になる」ため、問題なく運用できているように見えます。
しかし、
- 商品点数が増えた
- 人が入れ替わった
- 運用期間が長くなった
こうした変化をきっかけに、急に在庫が合わなくなる・原因が分からなくなるケースが多発します。
この記事では、
**「バーコード × 在庫管理 × Excel自作」**という組み合わせが、
なぜ途中で破綻しやすいのかを、現場目線で構造的に解説します。
Excel運用を否定するのではなく、
「どこまでなら成り立つのか」「どこからが危険なのか」を整理することが目的です。
H2-1|Excelでバーコード在庫管理を自作する現場が多い理由
在庫管理を見直そうとしたとき、
多くの現場で最初に選ばれるのが 「Excelでバーコードを使った自作管理」 です。
これは決して間違った判断ではありません。
むしろ、現場の状況を考えると 自然な選択 と言えます。
H3-1|初期コストがかからず、すぐ始められる
Excelを使ったバーコード在庫管理が選ばれやすい最大の理由は、
「今あるもので、すぐ始められる」 ことです。
- 新しいシステムを契約しなくてよい
- すでにExcelは社内で使われている
- バーコードフォントや無料ツールで作成できる
- バーコードリーダーも比較的安価に導入できる
このように、
追加コストをほとんどかけずに在庫管理を改善できそうに見える ため、
「まずはExcelでやってみよう」という判断になりやすいのです。
特に以下のような現場では、この選択が多く見られます。
- 小規模店舗・少人数の倉庫
- 在庫点数がまだ多くない段階
- 専任の在庫管理担当がいない
- システム導入前の暫定対応として
「今すぐ困っている」「でも予算は限られている」
──この状況では、Excelは非常に心強い選択肢に見えます。
H3-2|「読み取れる=管理できている」と錯覚しやすい
もう一つの大きな理由が、
バーコードが「目に見えて便利」だから です。
バーコードを使うと、
- 商品をスキャンすると数字が入る
- 手入力が減る
- 入力ミスが減ったように感じる
この体験によって、現場では次のような感覚が生まれやすくなります。
「ちゃんと読み取れている」
「だから在庫管理もできているはず」
しかしここで、
「読み取れること」と「管理できていること」 が
無意識のうちに同一視されてしまいます。
実際には、
- 何を基準に在庫を管理しているのか
- その番号が何を意味しているのか
- 同じ商品・違う商品をどう区別しているのか
こうした 管理の前提ルール が決まっていなくても、
バーコードは問題なく「読み取れてしまう」のです。
そのため、
- とりあえず動いている
- すぐに大きな問題が出ない
- 現場からクレームも出ていない
という状態が続き、
「これで十分うまく回っている」 と感じてしまいやすくなります。
このように、
Excel × バーコードの自作在庫管理は
- 始めやすく
- 便利に見え
- 初期段階では成果も感じやすい
という理由から、多くの現場で選ばれています。
次の章では、
「なぜそれでも在庫管理として成り立たなくなっていくのか」
その構造的な理由を整理していきます。
H2-2|バーコードを自作しても在庫管理が成り立たない構造的な理由

Excelでバーコードを自作し、
「読み取れる仕組み」を作ること自体は難しくありません。
しかし、
在庫管理として安定して機能し続けるか という点では、
多くの現場で同じ壁にぶつかります。
その原因は、運用や人の問題ではなく、
仕組みそのものの前提構造 にあります。
H3-1|バーコードは「入力補助」であって「管理ルール」ではない
まず整理しておきたいのは、
バーコードの役割 です。
バーコードは本来、
- 人の代わりに
- 機械が
- 情報を正確に入力するための手段
つまり、
「入力を楽にする道具」 です。
ここで重要なのは、
バーコード自体は次のことを一切決めていないという点です。
- その番号が何を意味するのか
- 同じ番号をどう扱うのか
- いつ・誰が・どの操作をしたのか
- 数量がどう変化したのか
これらはすべて、
在庫管理側のルール で決める必要があります。
しかしExcelで自作すると、
- バーコードを「作ること」
- 読み取って「セルに入ること」
が先に完成してしまうため、
「これで管理できているはず」
という認識になりやすくなります。
実際には、
- どの列が“正”なのか
- どの操作が“確定”なのか
- どこからが“履歴”なのか
が定義されていなくても、
バーコードは問題なく読み取れてしまいます。
結果として、
入力はできているが、管理は成立していない
という状態が生まれます。
H3-2|Excelは在庫管理の前提(履歴・一意性)を保証しない
在庫管理が成り立つためには、
最低限、次の前提が必要です。
- 一意性:
同じ商品・同じ在庫が重複して扱われない - 履歴性:
いつ・何が・どう変わったかを追える
しかしExcelは、この前提を自動では保証しません。
たとえば、
- 同じJANコードを別行に入力できてしまう
- 上書きしても、以前の状態は残らない
- 誰が変更したか分からない
- 修正前後の数量差が見えない
こうしたことは、
Excelでは 「普通に起きる挙動」 です。
もちろん、
- ルールを細かく決める
- 入力制限をかける
- マクロを組む
といった対策は可能です。
しかしそれは、
- 管理ルールを“人が守り続ける”前提
- 仕組みではなく運用でカバーする設計
になります。
人が増えたり、
端末が増えたり、
作業が分業された瞬間に、
この前提は簡単に崩れます。
Excel × バーコード自作が行き詰まる理由は、
現場が悪いからでも、努力が足りないからでもありません。
- バーコードは管理を定義しない
- Excelは管理の前提を保証しない
この2つが組み合わさることで、
「見た目は回っているが、内部は不安定」
という状態が必然的に生まれます。
次の章では、
この構造が実際の現場で どのようなトラブルとして表面化するのか を
具体例で整理していきます。
H2-3|Excel自作運用で実際に起きやすい在庫トラブル
Excelでバーコード在庫管理を自作している現場では、
ある時期から 同じ種類のトラブルが繰り返し起き始めます。
それは操作ミスというより、
構造的に起きる“必然の事故” です。
H3-1|商品・JAN違いが分からなくなり、上書きが発生する
最も多いのが、
「同じ商品だと思って処理したら、実はJANが違っていた」
というケースです。
Excel上では、
- 商品名が同じ
- 見た目も同じ
- バーコードも読み取れている
この状態だと、
「同一商品」として扱ってしまいがちです。
しかし実際には、
- 容量違い
- パッケージ変更
- 仕入先違い
- セット品・単品の違い
などで、
JANコードが別になっている商品 は珍しくありません。
Excelでは、
- JAN違いの商品を
- 同じ行に上書きできてしまう
- あるいは別行に重複登録できてしまう
という状態が普通に起きます。
その結果、
- 在庫数が合わなくなる
- どちらが正しいか分からない
- 気づかないまま次の処理が進む
といった問題につながります。
この背景には、
「バーコード」と「JANコード」を同じものとして扱っている
という認識のズレがあります。
👉 この点は
「バーコードとJANコードの違い」 を整理した記事で
詳しく解説していますが、
Excel自作運用では特に混同が起きやすいポイントです。
H3-2|棚卸・在庫数のズレが常態化し、原因が追えなくなる
もう一つ多いのが、
在庫数のズレが日常化してしまう問題 です。
棚卸のたびに、
- 数量が合わない
- 差異が出る
- でも原因が分からない
という状態になります。
Excel自作運用では、
- 誰が
- いつ
- どの操作で
- 数量を変えたのか
という履歴が残りません。
結果として、
- 読み取りは正常
- 入力もできている
- でも数字だけが合わない
という、非常に対処しづらい状況になります。
この段階になると、
- 「Excelが悪い」
- 「現場の入力が雑」
といった話になりがちですが、
実際にはそうではありません。
- 上書きできてしまう
- 履歴が残らない
- 一意性が保証されない
という 仕組みの前提 が原因です。
ズレは「たまたま」ではなく、
起きるべくして起きている 状態だと言えます。
これらのトラブルが続くと、
現場では次第に
- 「細かく見ない」
- 「だいたいで合わせる」
- 「棚卸は面倒な作業」
という空気が生まれてしまいます。
次の章では、
こうした状態が どのタイミングで限界を迎えるのか、
そして「なぜ修正では追いつかなくなるのか」を
整理していきます。
H2-4|人・商品・期間が増えたときに一気に破綻する理由

Excelでのバーコード在庫管理は、
最初のうちは問題なく回ることが多い です。
むしろ、
- 小規模
- 少人数
- 商品点数が少ない
この条件下では、
「十分使えている」と感じる場面も少なくありません。
しかし、
- 人が増え
- 商品が増え
- 運用期間が長くなる
この3つが重なった瞬間、
それまで表に出ていなかった問題が一気に噴き出します。
H3-1|入力ルールが人ごとに変わり、属人化が進む
最初は、
「この人が分かっていれば回る」
という状態で運用が始まります。
ところが人が増えると、
- 入力のタイミング
- 数量の扱い方
- エラー時の対処
- 修正・上書きの判断
が、人によって微妙に変わり始めます。
Excelには、
- 強制的に守らせるルール
- 操作を制限する仕組み
がほとんどありません。
そのため、
- Aさんはこう入力
- Bさんは別のやり方
- 忙しい時は省略
といった 暗黙ルール が増えていきます。
この時点で在庫管理は、
- 仕組みで管理している状態
ではなく - 人の記憶と経験に依存する状態
へと変わっています。
属人化が進んでいることに、
現場ではなかなか気づけません。
H3-2|Excelファイル管理では履歴と責任の所在が残らない
もう一つの大きな問題が、
「誰が何をしたか」が残らないこと です。
Excelファイルでは、
- 誰が
- いつ
- どの在庫を
- なぜ変更したのか
という履歴が、基本的に分かりません。
結果として、
- 数字が違う
- でも原因が追えない
- 修正しても再発する
という状態になります。
ここで重要なのは、
誰かのミスを責めても解決しない という点です。
なぜなら、
- ミスを防ぐ仕組みがない
- 証跡が残らない
- 責任の切り分けができない
という構造だからです。
この状態になると、
- 管理が曖昧になる
- チェックが形骸化する
- 「合っていればOK」という空気が生まれる
といった負の連鎖が始まります。
Excel運用が怖いのは、
徐々に壊れるのではなく、突然破綻したように見える ことです。
実際には、
- 少しずつズレが蓄積し
- ある日、表面化している
だけなのですが、
現場から見ると
「今まで問題なかったのに、急に回らなくなった」
と感じてしまいます。
次の章では、
こうした状況でも Excelで続けるなら最低限何を意識すべきか を
現実的なラインで整理していきます。
H2-5|それでもExcelで続けるなら最低限決めるべきこと
ここまで読んで、
「とはいえ、すぐにシステム化はできない」
「もう少しExcelで続けたい」
そう感じている現場も多いと思います。
実際、
Excelを使うこと自体が悪いわけではありません。
問題は、
- 何も決めずに
- 何となく使い続ける
ことです。
Excelで続けるのであれば、
最低限“決めておかないと必ず破綻するポイント” があります。
H3-1|管理の基準は「バーコード」ではなく「商品識別子」
最も重要なのが、
管理の基準を何にするかを明確にすること です。
よくある誤解は、
- バーコード=商品そのもの
という考え方です。
しかし実際には、
- バーコードは「読み取るための表現」
- 管理の軸になるのは「商品を一意に識別する番号」
です。
在庫管理で基準にすべきなのは、
- JANコード
- 自社商品コード
- SKU など
「この番号が同じなら同一商品」
と判断できる識別子です。
Excel運用でも、
- バーコードは入力を楽にするために使う
- 商品の同一性判断は識別子で行う
という役割分担を意識するだけで、
多くのトラブルは未然に防げます。
👉 この考え方を整理せずに
「バーコードが読めたからOK」という運用を続けると、
JAN違い・重複登録の問題が必ず発生します。
H3-2|現場ルールを決めない限り、同じトラブルは必ず再発する
もう一つ外せないのが、
現場ルールの明文化 です。
Excelでは、
- 入力を強制できない
- 操作を制限しづらい
という前提があります。
だからこそ、
- 誰が
- いつ
- どの画面で
- 何を入力・更新するのか
を、最低限決めておく必要があります。
たとえば、
- 商品登録は必ずこの列を確認する
- JANが違う場合は新規行を作る
- 修正はこの人だけが行う
といったルールです。
これを決めないまま、
- 人が増える
- 引き継ぎが発生する
と、
同じ在庫トラブルが形を変えて何度も再発 します。
Excelの限界は、
操作の難しさではなく
ルールを守らせられないこと にあります。
バーコード バーコードリーダーで省力化 在庫管理の全体像のまとめは下記記事をご覧ください。
在庫管理の問題は「やり方」だけで解決できるものではありません。
SKU・JAN・在庫数・Excel管理などはすべて、在庫管理という仕組みの一部にすぎません。
個別対策を積み重ねる前に、まずは全体の考え方と構造を整理することが重要です。
👉 在庫管理の全体像と考え方を整理する
H2-6|まとめ|Excel自作は“入口”であり“最終形”ではない
Excelでバーコード在庫管理を自作する現場は、
決して珍しくありません。
むしろ、
- まずExcelで始める
- 試しながら形にする
という流れは、
多くの現場にとって 自然な第一歩 です。
問題は、
その状態を「完成形」だと思ってしまうこと にあります。
H3-1|破綻する原因を理解すれば、次に何を考えるべきかが見える
Excel自作運用が行き詰まるのは、
現場の努力不足や入力ミスが原因ではありません。
- バーコードは管理ルールではない
- Excelは履歴や一意性を保証しない
- 人・商品・期間が増える前提で作られていない
こうした 構造的な前提 があるからです。
逆に言えば、
- なぜズレが起きるのか
- なぜ原因が追えなくなるのか
を理解できれば、
「次に考えるべきポイント」は自然と見えてきます。
それは、
- 誰が使っても同じ結果になる仕組み
- 履歴が残り、原因が追える状態
- 商品を正しく識別できるルール
といった、
管理の土台そのもの です。
H3-2|次に読むべき関連記事(在庫管理改善・仕組み化)
もし今、
- Excelでの運用に限界を感じ始めている
- でも、いきなりシステム導入は不安
という状態であれば、
次は「少しだけ視点を広げる」段階かもしれません。
- 在庫が合わない原因を整理する
- JAN・SKUの考え方を理解する
- 現場ルールと仕組みの違いを知る
こうしたテーマは、
段階的に理解していくことで、
無理なく次の一手につながります。
👉 在庫管理の基本から改善の考え方までを整理した
在庫管理TOP7記事 や、
👉 現場の状況整理から始めるための
在庫管理改善の導入ページ(LP) も、
必要になったタイミングで参考にしてください。
「今すぐ変える」必要はありません。
ただ、選択肢を知っておくこと は、
必ず現場の助けになります。
👤 筆者プロフィール|DXジュン(Apice Technology 代表)
「tecn」を運営している DXジュン です。
Apice Technology株式会社の代表として、20年以上にわたり
Web制作・業務改善DX・クラウドシステム開発に携わっています。
普段は企業の現場課題に寄り添いながら、
在庫管理システム/予約システム/求人管理/受発注システム/クラウドソーシング など、
中小企業の仕事を“ラクにするツール”を作っています。
tecn では、業務改善のリアルや、Webシステムの仕組み、 そして「技術が生活をちょっと楽しくしてくれる」ような 日常×デジタルのヒントをゆるく発信しています。
現在の注力テーマは 在庫管理のDX化。 SKU・JAN・棚卸・リアルタイム連携など、 現場で役立つ情報を発信しつつ、 自社のクラウド在庫管理システムも開発・提供しています。
🔗 Apice Technology(会社HP)
🔗 tecn トップページ
🔗 在庫管理システムの機能紹介
記事があなたの仕事や生活のヒントになれば嬉しいです。 コメント・ご相談があればお気軽にどうぞ!





コメント