商品属性の設計方法|素材・型番・原産国を正しく管理するマスタ運用ルール
在庫管理や商品マスタ運用の現場では、素材・型番・原産国といった「商品属性」の設計ルールが曖昧なまま運用されているケースが少なくありません。
属性の基準がバラバラだと、誤出荷・検索性の低下・棚卸ミス・EC登録の手戻りが頻発し、在庫管理の精度が大きく崩れてしまいます。
商品属性は単なる説明項目ではなく、**SKUを補完し、商品を正しく識別するための“必須データ”**です。
しかし、SKUと属性の線引きが間違っていると「SKUが増えすぎて管理が破綻する」逆効果も起きます。
本記事では、
素材・型番・原産国などの商品属性をどう設計し、どうマスタ運用に組み込むべきかを、現場で迷わないレベルで体系的に解説します。
今日から使えるルールづくりの具体例も紹介しますので、商品マスタを整えたい中小企業の方はぜひ参考にしてください。
在庫が合わない、棚卸が終わらない──。
そんな「人手頼みの在庫管理」を根本から変える方法を解説しています。
在庫を仕組みで回すための“第一歩”として、こちらの記事もぜひご覧ください。
👉 在庫管理がうまくいかないのは「人」ではなく「仕組み」|中小企業が3日で変わるクラウド導入の現場
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H2-1|商品属性とは?在庫管理で「絶対に必要な情報」とは何か
まず最初に読みたい関連記事(3選)
在庫管理の“核”となるSKUとJANの基本を押さえると、このページの理解が深まります。
商品管理の運用で欠かせない「素材」「型番」「原産国」などの基本情報は、一般的に 商品属性(アトリビュート) として扱われます。
この属性は見た目の説明項目ではなく、**在庫データの正確さや出荷ミス防止に直結する“管理すべき情報”**です。
商品を管理する際、整理すべき情報は大きく分けて次の2つになります。
- 在庫数量を区別する単位(SKU)
- SKUを補足し、商品を識別しやすくする属性情報(商品属性)
この2つの役割を混同してしまうと、SKUを必要以上に増やしてしまい、
結果として 管理負荷が増大 → 在庫の不一致 → 棚卸に時間がかかる といった問題が起こりやすくなります。
そこでこの記事では、
商品属性とは何か、SKUとどう切り分けるべきなのか
その考え方を現場視点で整理して解説します。
H3-1|商品属性=商品を区別するための“補足情報”
商品属性とは、SKUを説明・識別しやすくするための 追加情報 のことです。
具体的には次のような項目が該当します。
- 色(ブラック/ブルー/ベージュなど)
- サイズ(S/M/L)
- 素材(綿/ポリエステル/革)
- 型番(メーカー型番・社内型番)
- 原産国(中国/日本/タイ)
- 容量・重量
- ブランド名
これらは商品の特徴を示す“説明情報”であり、
在庫数量を分ける必要のない付帯データです。
重要なのは、
SKU=数量を管理する最小単位
属性=SKUを説明する補足情報
という明確な役割分担を持たせることです。
H3-2|SKUと属性の切り分け方(細分化しすぎを防ぐ)
SKUは「数量を別々に管理する必要があるかどうか」で決めます。
一方で、属性は「SKUの特徴を示す説明情報」です。
❌ よくあるSKUの細分化ミス
- 素材違い(綿と麻など)を別SKUにしてしまう
- パッケージ違いまでSKUにしてしまう
- 取引先ごとの型番の違いをSKUに登録
- 原産国ごとにSKUを作成
こうした分類を行うと SKU 数が増加し、
棚卸の手間・ミス・重複登録・検索性の低下 が一気に進行します。
✔ 正しい線引き
- 数量が別管理になる情報 → SKU
(例:色・サイズ・バリエーション) - 数量は共通でよい情報 → 商品属性
(例:素材・型番・原産国・説明文など)
SKUと商品属性を分離すると、
SKUは最適な数に抑えられ、商品属性も整理された状態を維持できます。
H3-3|商品属性を整えると現場はどう変わる?(3つの改善効果)
商品属性の整理が進むと、在庫管理の精度と現場の作業性が大幅に向上します。
① 誤出荷の減少
検索時に「型番・素材・色・サイズ」が統一された形で表示されるため、
類似商品を取り違えるリスクが減少します。
② 社内検索性の向上
商品マスタが整っていれば、
担当者が型番・色・原産国で瞬時に検索でき、
EC登録・問い合わせ対応・在庫調査のスピードが向上します。
③ 棚卸の効率化
SKUが不必要に増えないため、
カウント対象がシンプルになり、
棚卸ミスや数量の食い違いが大幅に減ります。
④ 全チャネルでの情報統一
EC・実店舗・卸など複数チャネルで名称揺れが発生せず、
「画面上は別商品扱いなのに、実物は同じ商品」といった混乱を防げます。
H2-2|代表的な商品属性|色・サイズ・素材・型番・原産国ほか
商品マスタを作る際、必ず検討すべき代表的な属性が 色・サイズ・素材・型番・原産国 の5つです。
どれも在庫管理に直結しますが、それぞれ役割が異なるため、SKUにするか属性にするかの判断基準を理解しておくことが大切です。
以下では、中小企業が迷いやすい代表的な商品属性を、現場で使える具体例とともに解説します。
H3-1|色・サイズ(SKU分岐の王道)
最もSKUとして分岐させるべき属性が「色」と「サイズ」です。
この2つは、数量が別管理になり、入出荷も別に行われるため、SKU(最小在庫単位)として扱うのが一般的です。
✔ SKUにすべき理由
- ブラックのMサイズが売れても、ホワイトのMサイズは減らない
- 「色違い・サイズ違い」は誤出荷が起きやすいので個別の数量管理が必要
- 倉庫での配置や棚番も別々に管理される
❗よくある失敗
- 色はSKUにするが、サイズを属性として持ってしまう
- 「色を属性」「サイズをSKU」という 混在管理 をして在庫が破綻する
SKUは 色 × サイズ の掛け合わせで作る のが基本です。
H3-2|素材(同型番でも素材違いはSKU or 属性?)
素材は判断が難しい属性のひとつ。
しかし結論は明確で、こう考えると間違いません。
✔ 基本ルール
- 素材が違っても数量が別管理にならない → 属性でOK
- 素材違いで在庫が別になる → SKUに昇格
【ケース1:属性で管理してOK】
同じTシャツで「コットン100%」と「混紡」がある場合でも、
SKU単位が「色 × サイズ」で固定されているなら、
素材はSKUを分ける必要がありません。
例:
白×M のSKUは1つ。素材が変わっても管理単位は同じ。
【ケース2:SKUを分けるべき】
素材が違うと別商品として扱う業界(バッグ・靴・家電など)では、
素材が変わると仕入先・単価・重量・EC表示が変わるため、SKUを分けるべきです。
例:
- レザー素材のバッグ
- ナイロン素材のバッグ
→ 入荷ロット・保管場所・販売価格が全て異なる
H3-3|型番・モデル番号(仕入先ごとの型番違いに注意)
型番・モデル番号は「商品を一意に識別する番号」ですが、SKUとは別物です。
✔ 基本ルール
- 数量が同じなら1SKUでOK
- 型番は「説明情報」「検索用属性」として扱う
❗現場で最も多いトラブル
仕入先ごとに型番が異なるケースです。
例:
- メーカー型番:ABC-100
- 卸Aの型番:A-100
- 卸Bの型番:B-100
- 自社の型番:XYZ-001
このときに「型番ごとにSKUを分けてしまう」企業が多く、
結果として 在庫がバラバラに見えてしまう という致命的な問題が発生します。
✔ 正しい管理
- SKUは1つ
- 型番は属性として「複数持つ」
- その上で検索を高速化させる
SKUを増やさずに型番差異を管理できると、
EC登録も倉庫検索も“劇的に”楽になります。
H3-4|原産国(表記揺れ・輸入品の管理ポイント)
原産国は商品情報として重要ですが、在庫管理では ほぼ例外なく属性扱い です。
✔ SKUにしない理由
- 原産国が変わっても数量管理は変わらない
- 同じ商品でも時期によって原産国が変わるケースがある
- SKUにしてしまうと無限に増える(最悪のパターン)
❗よくある現場トラブル
- “China”
- “中国”
- “CHN”
- “made in China”
原産国の表記揺れが起き、
EC登録・倉庫検索・輸入元管理が混乱するパターンが多発します。
✔ 正しい管理ルール
- 自社で「原産国コード」を作る
- China=CN、Japan=JP、Vietnam=VN などで統一
- マスタ登録時に必ず“コード化”する
このルールを入れるだけで、
輸入商品でも混乱のないマスタ運用が実現します。
H3-5|ブランド・メーカー(識別性を高める“検索性属性”の代表格)
ブランドやメーカー名は、商品属性の中でも“検索性”に直結する非常に重要な情報です。
しかし在庫管理の観点では、SKUを分ける必要はなく、説明情報として持つ属性として扱うのが正解です。
✔ ブランド・メーカーは「検索性を上げる属性」
EC・営業・倉庫・カスタマーサポート、
すべての部門でよく利用されるのが「ブランド名」と「メーカー名」です。
- メーカー問い合わせ時
- 型番検索時
- EC登録時
- 顧客対応での商品特定
- 社内検索で該当商品を探すとき
ブランド名・メーカー名が統一されているだけで、
社内の検索工数が半減し、誤った商品を参照するリスクも減ります。
✔ SKUにしない理由
ブランドやメーカーが異なっても、「同じSKUとして管理すべき商品」は多く存在します。
例:
同じOEM商品を複数ブランドで販売する例
- メーカー:OEM工場(型番:ABC-100)
- ブランドA:モデル:123-A
- ブランドB:モデル:123-B
このときにブランドごとにSKUを分けてしまうと、
本来ひとつで良い在庫が2つのSKUに割れてしまい、在庫ズレや誤出荷の原因になります。
✔ 正しい管理ルール
ブランド・メーカーはあくまで“属性”として統一し、SKUは1本化します。
- SKU:1つ
- 属性:メーカー名、ブランド名、型番、JANなどを保持
こうすることで、
在庫数量は1つのSKUで管理しつつ、検索性を高める情報を属性として蓄積できます。
✔ 現場で起こる“ブランド表記揺れ問題”
ブランド名は特に表記揺れが発生しやすく、
在庫管理やEC連携でトラブルの原因になります。
例:
- “Panasonic”
- “パナソニック”
- “panasonic”
- “Pana.”(担当者が略称で登録)
このような揺れがあると検索に引っかからず、
誤登録・重複商品・棚卸時の混乱につながります。
✔ 解決策=「ブランドコード」を持つ
中小企業でも必ず導入したいのが ブランドコード の仕組みです。
例:
- Panasonic → B001
- SHARP → B002
- 無印良品 → B003
ブランド名(日本語/英語)を何種類持っても、
内部管理は コードで一本化 されるため、登録ミスを防ぎ、検索も圧倒的に早くなります。
✔ メーカー情報は属性にすると“調達”が強くなる
メーカー情報を属性として持つと、次の管理がしやすくなります。
- 仕入先の切り替え
- メーカー直販価格の比較
- OEM商品の判別
- 故障時の問い合わせ先管理
- モデルチェンジの追跡
SKUを分けないからこそ、
メーカー情報を属性として蓄積する価値が大きくなります。
H2-3|SKUと属性をどう分ける?正しい“線引きルール”
SKU(在庫管理の最小単位)と属性(SKUを説明する情報)の境界を曖昧にしたまま商品登録を続けると、在庫管理は必ず破綻します。
特に中小企業では、仕入先の資料をそのまま転記してSKU化してしまい、気づくとSKUが数百〜数千に膨れ上がるケースも珍しくありません。
ここでは、SKUと属性の“線引きルール”を実務で迷わないように明確に解説します。
H3-1|SKUにすべき基準:在庫数量が異なるもの
SKUにすべき基準は非常にシンプルです。
✔ 在庫数量が別々に動くものは SKU にする
例:
- 色違い
- サイズ違い
- セット数違い(1本/2本/5本セット)
- 容量違い(100ml/300ml/500ml)
- 電圧・規格違い(日本仕様/海外仕様)
これらは入庫・出庫が別々に起きるため、数量を別管理しないと誤出荷・在庫ズレが必ず発生します。
❌ NG例(SKUにしなかった場合)
・白Mと白Lを“同じSKU”で管理してしまう
→ 白Mが売れてもLが減ることになる
→ 出荷ミス・棚卸不一致が発生
SKUの役割は、
「数量を正確に数えるための最小単位」
であることを忘れてはいけません。
H3-2|属性で管理する基準:見た目・検索性に関わる情報
逆にSKUに“すべきではない”ものは、次の基準で判断します。
✔ 在庫数量が変わらないもの=属性で管理する
例:
- 素材(綿100%、ナイロンなど)
- 原産国
- ブランド名/メーカー名
- 型番(メーカー型番・卸型番)
- カラー名の別表記(ブラック/黒/BK)
- 重量、スペック、寸法
- パッケージ形状
- 商品説明文・仕様書情報
これらは「SKUを説明するための情報」であり、数量管理とは無関係です。
❗NG例(SKU化してしまったケース)
- 原産国違いで SKU を分けた
- パッケージ違いで SKU を分けた
- 仕入先ごとの型番違いで SKU を分けた
→ 結果:SKUが意味なく増え、棚卸が地獄化
属性はあくまで「検索しやすい・迷わないため」の補助情報です。
H3-3|SKUを細分化しすぎると破綻する理由(在庫ズレ・棚卸負担)
SKUは細かくしすぎると、現場は必ず混乱します。
❌ ① SKU数が爆発する(管理不能になる)
SKUを安易に増やすと、
「1商品につき10SKU」「EC1000商品で1万SKU」
のように膨れ上がります。
Excel台帳・旧システムではこの瞬間に破綻。
❌ ② 棚卸の負担が3〜5倍に増える
SKUが増えるほど棚卸項目が増え、
棚番にもSKU数分の記録が必要になります。
結果、
- カウント時間が増える
- 人的ミスも増える
- 総在庫の調整が難しくなる
❌ ③ 入出荷ミスが急増する
SKUを細かくすると見た目が似たSKUが多数発生します。
例:
- Tシャツ 白 × M(素材A)
- Tシャツ 白 × M(素材B)
- Tシャツ 白 × M(型番違い)
似たSKUが複数あると誤出荷の確率が跳ね上がるのは当然です。
❌ ④ システム連携が複雑化する
SKUは最終的に
- EC
- 基幹
- 倉庫WMS
- 発注システム
- POS
すべてと連携します。
SKUが無駄に増えると、
それらのすべての連携が困難になり、
運用コストが激増します。
✔ 結論:SKUは“極力少なく”、属性は“豊富に”
SKUを絞り、属性で詳細情報を管理する構造が
最も安定し、現場が迷いません。
H3-4|SKU一本化でJANコード違いに対応する実務例
JANコードは仕入先や販売チャネルによって変わるため、
JAN違いでSKUを分けると在庫ズレの原因になります。
❌ よくある失敗
同じ商品なのに JAN が3種類ある場合:
- JAN①:メーカー直仕入れ用
- JAN②:卸A用
- JAN③:EC専用
これを SKU①、SKU②、SKU③ に分けてしまう企業が非常に多いです。
結果、
在庫は1つなのに帳簿上は3つという矛盾が発生します。
✔ 正しい運用:SKUは1つ、JANは属性として紐づける
SKU
→ 1つ
JAN
→ 複数紐づけて管理(JAN1、JAN2、JAN3)
メリット
- 在庫数量が1つに統合され、ズレにくい
- EC・卸・実店舗など、チャネルごとの明細が作りやすい
- どのJANで販売されたかログとして残せる
- 棚卸対象が増えず、誤カウントも減る
✔ 実務例:SKU一本化+JAN属性化の管理画面(イメージ)
SKU:ABC-100-WH-M
属性:
- 色:ホワイト
- サイズ:M
- JAN(メーカー):4580001234567
- JAN(卸A):4900005566778
- JAN(EC用):4999991112223
このように SKU は1つで、
JAN“だけ”複数管理すればすべて解決します。
H2-4|商品属性の設計ルール|中小企業が失敗しないための実務ポイント
商品属性をどう設計するかで、在庫管理の精度が大きく変わります。
Excel台帳で“なんとなく属性管理”をしている企業は、
・表記揺れ
・重複登録
・SKUの増殖
・棚卸ミス
といった運用トラブルを避けられません。
ここでは、商品属性の「設計ルール」を 中小企業が現場で迷わず使える形 に整理します。
H3-1|必須属性/任意属性の仕分け(まず“減らす”ことが重要)
商品属性を設定するとき、多くの企業は最初から“全部載せ”にしてしまいます。
すると、登録項目が増えすぎて入力が追いつかず、結果として運用が崩壊します。
最初にやるべきことは 属性を減らすこと です。
✔ 必須属性(どの企業でも必要になる情報)
これは「商品を取り違えないために必要な情報」です。
- 色
- サイズ
- 型番(最低限の識別)
- 原産国(業種による)
- ブランド名
- メーカー名
- JAN(あれば)
これらは表示・検索・出荷間違いの防止に直結します。
✔ 任意属性(企業によって変わる情報)
業態によって必要性が変わる情報です。
- 重量
- 材質の詳細(比率など)
- 注意書き
- 発売日
- 付属品
- パッケージ情報
- 商品スペック(家電など)
これらは後から属性として追加したくなる場合がありますが、
最初から全部を“必須”にすると運用が破綻します。
✔ 結論:最初に「必要最小限」に絞る
商品属性は
“増やすより削るほうが難しい”
という前提で設計する必要があります。
まずは最低限の項目だけに絞り、
運用が回ってきた段階で追加していく方が確実です。
H3-2|表記揺れを防ぐ入力ルール(色名・素材名・原産国の統一)
属性で最もトラブルを起こすのが 表記揺れ です。
例:
色(BLACK)
- 黒
- くろ
- ブラック
- BLACK
- BLK
- bk
現場ではこれが混在し、検索しても目的の商品が出てこない状態が日常的に発生します。
✔ 色名の統一ルール(必須)
企業ごとに「色コード」を作るのがベストです。
例:
- WH(ホワイト)
- BK(ブラック)
- BL(ブルー)
- RD(レッド)
表示は自由でも、内部管理はコードで統一が理想。
✔ 素材名の統一ルール
仕入先ごとに名称が異なるため、統一が必須。
例:
- コットン → COTTON
- 綿 → COTTON
- 100%綿 → COTTON 100%
内部管理は「COTTON」「NYLON」「POLYESTER」など 固定表記 にします。
✔ 原産国の統一ルール
原産国は特に揺れが多い項目です。
例:
- China
- 中国
- CHN
- made in China
これも 国コード(ISO) を統一採用します。
例:
- CN(中国)
- JP(日本)
- VN(ベトナム)
- TH(タイ)
このルールを設定するだけで、検索性が一気に改善します。
H3-3|仕入先からの資料を属性に変換するときの注意点
仕入先の資料をそのまま商品マスタに転記すると、100%運用が崩れます。
❌ よくある問題
- PDF資料の色表記がバラバラ
- 卸Aと卸Bで型番が違う
- 原産国の欄が欠落している
- JANコードが2つ以上存在する
- “メーカー品番”と“管理番号”が混在
仕入先の資料は “仕入先の都合で作られた資料” であって、
自社の在庫管理の基準にはなりません。
✔ 正しい変換のステップ
- 自社の属性ルールに沿って変換する
色名 → 自社コード
原産国 → CN/JP などのコード化
型番 → メーカー型番+自社管理番号 - 欠落情報は仕入先に必ず確認する
- JANは複数あっても1SKUに統合する
- 資料をベタ貼りしない。必ずマスタに“翻訳”する
仕入先資料を“原本のまま使わない”という運用だけで、
商品データは圧倒的にきれいになります。
H3-4|Excel台帳で限界が来る理由(マスタ化の重要性)
多くの企業が、最初はExcelで商品属性を管理します。
しかしSKU100を超えると、Excel台帳には確実に限界が訪れます。
❌ 限界1:表記揺れを防げない
入力した人によって表記が揺れ、
検索も集計も不可能になります。
❌ 限界2:更新漏れが発生する
複数のシートで属性項目が重複していると、
1ヶ所更新しても他が古いままになる。
❌ 限界3:SKU数が増えるほどソート・フィルタが破綻
SKU×属性の組み合わせが1000件超えると、
Excelは“スクロールすら困難”な状態になります。
❌ 限界4:EC・WMS・POSとの連携が不可能
Excelはあくまで「手元の管理表」であり、
システム連携できるフォーマットではありません。
✔ 解決策=「商品マスタをシステム化する」
Excelでの属性管理には限界があります。
・入力ルール
・表記揺れ
・JANの複数管理
・SKUの統一
・検索性
これらはすべて マスタ化(データベース化) によって初めて解決できます。
アピス在庫管理のような
SKUマスタ × JAN管理 × 属性マスタ の構造を採用することで、
- 取り違えが減る
- 在庫ズレが減る
- 登録・検索が早くなる
- どの部署でも同じ情報を見られる
という “在庫管理の基礎体力” が手に入ります。
H2-5|マスタ設計のコツ|商品属性を長く運用できる形にする
商品属性は、一度設計すると数年〜10年以上使い続ける“会社の資産”になります。
しかし、最初の設計を間違えると、後から修正できず、在庫管理やEC運用の負担を何倍にもしてしまいます。
ここでは、在庫管理システムやEC連携を前提とした「長く使える商品マスタ」の作り方を解説します。
H3-1|属性コード化のポイント(COLOR=01、SIZE=Mなど)
商品属性を “そのまま文字で保存する”のはNG。
必ず「コード化」する必要があります。
✔ なぜコード化が必要なのか?
理由は3つ:
- 表記揺れを防ぐため
黒/ブラック/BLACK/BLK をすべて「BK」に統一できる。 - 検索・フィルタが高速になるため
コードは短く、ソートもしやすい。 - システム連携が安定するため
他システムとのデータ交換でエラーが減る。
✔ よく使われるコード化の例
● 色(COLOR)コード
- 01: WH(ホワイト)
- 02: BK(ブラック)
- 03: BL(ブルー)
- 04: RD(レッド)
● サイズ(SIZE)コード
- S / M / L / XL(そのままコード化でも可)
● 原産国(COUNTRY)コード
- JP(日本)
- CN(中国)
- VN(ベトナム)
- TH(タイ)
● 素材(MATERIAL)コード
- CT:Cotton
- NY:Nylon
- PL:Polyester
✔ コード化の原則
- 内部管理=コード
- 表示=フル名称
という“二層構造”を必ず作る。
(例)
内部:BK / 表示:ブラック
内部:JP / 表示:日本製
この仕組みにするだけで、マスタは10年スパンで安定します。
H3-2|商品マスタ・SKUマスタ・属性マスタの役割
マスタ設計の本質は「データの分離」です。
3つのマスタに分けて管理することで、在庫管理がシンプルになります。
✔ ① 商品マスタ(product master)
“商品そのもの”を管理するマスタ。
含める情報:
- 商品名
- ブランド
- メーカー
- カテゴリ
- 概要説明
- メーカー型番
- 標準単価
- EC商品名
商品マスタは商品を1つの“概念”として扱う場所。
✔ ② SKUマスタ(sku master)
“数量が動く単位=在庫管理の核”。
含める情報:
- 商品ID(product_id)
- SKUコード
- 色コード
- サイズコード
- JAN(複数可)
- 在庫数
- 棚番
- 重量サイズ(出荷に関係する情報)
SKUマスタが最重要であり、
在庫が動くのは必ず「SKU」だけ。
✔ ③ 属性マスタ(attribute master)
“表示・検索・紐付けのための辞書”。
含める情報:
- 色コード一覧
- サイズコード一覧
- ブランド一覧
- 原産国一覧
- 素材一覧
- カテゴリ一覧
属性マスタは 登録ルールを守るための辞書 であり、
表記揺れを完全に防ぐ役割があります。
✔ 3つに分けると何が良いのか?
- SKUを増やさず情報だけ増やせる
- ブランド変更・原産国変更が“安全に”可能
- JAN追加・削除も柔軟にできる
- EC連携が安定する
- モデルチェンジの移行がスムーズ
中小企業が最も陥る「SKUの爆発」を防げるのは、この構造だけです。
H3-3|複数チャネル販売時に必要な属性(EC・卸・実店舗の違い)
今や多くの企業が
EC × 卸 × 実店舗
のマルチチャネル販売をしています。
チャネルごとに求められる属性が微妙に異なるため、最初からマスタに入れておく必要があります。
✔ ECに必要な属性
- 商品名(SEO対応)
- 商品説明
- カテゴリ(楽天/Shopify/BASE独自)
- カラー名(ユーザー向け名称)
- 素材表記
- 原産国(表示義務)
- JAN
- 画像URL
- 商品スペック
✔ 卸に必要な属性
- メーカー型番
- 卸売単価
- ケース入数
- マスターケース単位
- ロット情報
✔ 実店舗に必要な属性
- プライスタグ用の商品名
- スペック簡易版
- バーコード(JAN)
- 棚番
✔ 結論:チャネルごとの特殊属性は「属性マスタ」に寄せる
チャネル別の仕様でSKUを増やすのは完全にNGです。
必要なのは
属性を増やす → SKUは増やさない
という設計。
これでECのSKUと倉庫のSKUが分離する最悪の事態を防げます。
H3-4|棚卸・分析・売上集計に強くなる属性構成
商品属性を適切に設定すれば、棚卸だけでなく分析や売上集計にも強くなります。
✔ 色別売上(カラー別ランキング)が作れる
- BKが売れるのか
- WHが売れるのか
→ 製品企画にも使える
✔ サイズ別需要(S/M/Lの偏り)がわかる
→ 発注戦略が最適化される
✔ 原産国別の品質傾向分析ができる
→ クレーム分析がしやすい
✔ 卸 vs EC のチャネル別売上分析
→ チャネル戦略の意思決定が早くなる
✔ 棚卸時の属性表示で“迷わない”
SKUに紐づく属性が整理されていると、
倉庫担当者がスムーズに棚卸できます。
✔ 正しい属性構成=全社で使える“経営データ”になる
SKU×属性の設計が正しいと、データは自然に蓄積され、
- 経営判断
- 仕入判断
- 在庫最適化
- 発注計画
- EC戦略
すべてが正確になります。
これは、在庫管理システムを導入する企業が
最初に着手すべき土台づくりです。
H2-6|具体例|素材・型番・原産国をこうやって管理する
商品ごとに「素材」「型番」「原産国」が微妙に違う場合、
SKUを増やすべきか、属性で持つべきかの判断は難しくなります。
ここでは 実際の運用を想定した具体例 を用いながら、
どう管理すべきかをわかりやすく解説します。
H3-1|「素材」:同じ商品でも複数素材がある時のSKU判断
素材が異なる商品は、SKUを分けるべきか?
結論は “数量管理が分かれるかどうか” で判断します。
✔ ケース1:素材違いでも SKU を分けない(属性管理でOK)
条件:実在庫は1種類だけ/素材は“情報”として扱うだけ
例:
- 商品名:シンプルTシャツ
- 色:白
- サイズ:M
- 素材:綿100%(旧ロット)、綿95%+ポリ5%(新ロット)
この場合、販売単位は同じで、ロット切り替えで素材が変わるだけ。
数量管理は一体のため、素材は 属性で保持 すれば十分です。
管理イメージ
SKU:TSHIRT-WH-M
素材属性:
- v1:COTTON100
- v2:COTTON95/PL5
SKUは1つで、素材の違いは“情報”として追加するだけでOK。
✔ ケース2:素材違いで価格・用途が変わる場合はSKU化
例:
- レザーバッグ(本革)
- レザーバッグ(PU:合皮)
→ 単価・重量・見た目・在庫ロケーションが異なるため、SKU分割が必要。
✔ 結論
- 素材違いでも数量管理が一体 → 属性
- 素材違いで販売物が実質“別商品扱い” → SKU
これがもっとも運用を安定させる判断基準です。
H3-2|「型番」:メーカー型番と自社型番を併記する運用
型番(モデル番号)はSKUを分ける要因になりません。
むしろ 型番が複数ある場合は「属性にまとめる」ほうが正解です。
✔ よくあるケース
- メーカー型番
- 卸用型番
- 自社管理用型番
- EC登録用型番
…と、同じ商品に複数の型番が存在する。
これを SKU に分割すると破綻します。
✔ 正しい運用:型番は“複数属性”として持つ
例:
SKU:CAMERA-001-BK
属性:
- maker_model:ABC-100
- wholesale_model:WH-200
- internal_sku:IC-001
- ec_model:EC-001
SKUは1つ、型番だけ複数持つのが正しい形。
✔ メリット
- 在庫が1つに集約され、ズレが消える
- どの型番から検索されても1件にヒットする
- EC登録や卸伝票の作成が楽になる
- 仕入先変更にも柔軟に対応
型番は**検索のための“索引用属性”**として扱うのが最適解です。
H3-3|「原産国」:表記揺れと輸入品の変更リスク管理
原産国は輸入品の多い企業で特に扱いが難しく、
表記揺れ管理とリスク管理の2つがポイントになります。
✔ 表記揺れ対策(基本ルール)
原産国は必ず コード化(ISO) します。
- JP(日本)
- CN(中国)
- VN(ベトナム)
- TH(タイ)
- KR(韓国)
【NG例】
- 中国
- CHINA
- CHN
- made in China
揺れが起こると検索性が壊れます。
✔ 原産国が“途中で変わる”ときの注意点
典型例:
「ロットAは中国製」「ロットBはベトナム製」というケース。
SKUを分ける必要は原則なし。
数量管理が変わらない限り、原産国違いは 属性 として持ちます。
ただし、事実を履歴として残せるように、
原産国属性は履歴管理(ver管理) が理想。
例:
- v1:CN(2023/08〜2024/09)
- v2:VN(2024/10〜)
ECの表示義務は「最新ロット」で表示すれば問題ありません。
✔ 原産国違いがSKU分割になるケース
- 原産国違いで価格が大きく変わる
- 梱包単位が変わる
- 法規制の関係で別商品扱いになる
このような例外を除けば、基本は属性管理が最適です。
H3-4|統合例:SKU=1でも“素材・型番・原産国”をマスタで持つケース
最後に、もっとも現場でよくあるケース
「SKUは1つなのに素材・型番・原産国が全部違う」
という状況の正しい管理方法を示します。
✔ 商品例
商品名:シンプルショルダーバッグ
色:ブラック
サイズ:M
実際には以下のように差異がある:
- 素材:レザー/PU(時期で変更)
- 型番:メーカー型番、卸型番、EC型番の3種類
- 原産国:中国製→ベトナム製に変更
✔ 正しいマスタ構造(例)
● SKU(1つ)
SKUコード:BAG-BK-M
数量:100
● 属性(複数保持)
素材(material)
- レザー(ver1)
- PU(ver2)
型番(model)
- maker:AB-100
- wholesale:W-200
- ec:E-300
原産国(country)
- v1:CN
- v2:VN
✔ メリット
- 在庫数量は1つにまとまり、ズレが発生しない
- 情報はすべて“属性”として残る
- 履歴管理も容易
- ECや卸との連携が正確
- 担当者が変わっても運用が続く
✔ 結論
SKUは増やさず、
素材・型番・原産国は“属性で豊かに”管理する。
これが最も現場に優しい設計であり、
データの寿命を10年以上延ばす方法です。
H2-7|まとめ|商品属性の設計=在庫管理の“土台づくり”
商品属性は単なる「説明情報」ではなく、在庫管理の精度を左右する“会社の基盤データ”です。
ここを正しく設計すると、棚卸、出荷、EC登録、仕入、分析——あらゆる業務が一気に整います。
逆に、属性を混乱させたまま運用を続けてしまうと、
SKUの爆発・表記揺れ・誤出荷・EC登録ミスなど、あらゆる問題の原因になります。
商品属性の設計は、まさに 在庫管理の土台そのもの です。
H3-1|属性を整理すると在庫・棚卸・誤出荷が激減する
商品属性を整理し、
- 色
- サイズ
- 素材
- 型番
- 原産国
- ブランド
- JAN
を一貫したルールで管理できるようになると、現場の作業は劇的に改善します。
✔ 効果(現場で即体感できるレベル)
- 違う商品を誤ってピッキングするミスが減る
- 棚卸時間が短縮され、差異も大幅減少
- EC登録の手戻りがなくなる
- 仕入先変更時に“前のデータ”が混ざらない
- 営業・カスタマーサポートの検索時間が半減
属性の整理とは、現場の“迷いをなくす”作業です。
H3-2|SKUは増やさない、属性で賢く情報管理する
この記事の最大の結論はこれです。
✔ SKUは必要最小限。情報は属性で豊かにする。
SKUは“在庫数量が動く単位”であり、
詳細情報はすべて属性として持つほうが、
運用は圧倒的に安定します。
❗SKUを増やすと起きる問題
- 棚卸が地獄化する
- 在庫ズレの原因が増える
- システム連携が複雑になる
- チャネル別在庫が分裂する(最悪のパターン)
✔ 逆に属性で管理すべき情報
- 素材違い
- 原産国違い
- 型番違い(メーカー・卸・EC用)
- JAN複数
- パッケージ違い
- 仕入先違い
数量が変わらない限り SKU は増やさない。
“SKUを守り、属性を増やす” が正しい運用です。
H3-3|次に読むべき関連ページ
まず最初に読みたい関連記事(3選)
在庫管理の“核”となるSKUとJANの基本を押さえると、このページの理解が深まります。
在庫が合わない、棚卸が終わらない──。
そんな「人手頼みの在庫管理」を根本から変える方法を解説しています。
在庫を仕組みで回すための“第一歩”として、こちらの記事もぜひご覧ください。
👉 在庫管理がうまくいかないのは「人」ではなく「仕組み」|中小企業が3日で変わるクラウド導入の現場
機能はシンプル。でも、使えば業務効率がぐんと上がる。
アピス在庫管理 ― 小規模事業者・店舗のための“ちょうどいいDX”。
手作業から脱却し、在庫の見える化を実現しよう。 アピステクノロジー(株)

在庫管理の核となるSKUの説明を参考にしてください。
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